こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

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愛した女と愛する女の間で揺れる男。もう汚れ仕事はしないと決心したのに、過去はどこまでも追いかけてくる。物語は、大量殺りく兵器を開発・販売しようとする組織と闘うスパイの奮闘を追う。テロリストのラスボスは、厳重警戒の刑務所に収監中なのにいまだに部下たちを遠隔操作している。さらに彼らを親の仇と憎む仮面の男。元上司が絡んでいる。同盟国の友人の頼みは断れない。心に深い傷を抱えたまま引退生活を送ってきた主人公は再び謀略と暗殺の世界に戻ってくる。“かつては敵とじかに対決できたのに、今は空中を漂っているよう” というセリフに、立場が違うそれぞれの正義が対立し合う21世紀の混迷が凝縮されていた。今や殺人兵器もターゲットに合わせてカスタムメイドされる時代、ナノレベルの攻撃方法がユニークだ。

DNAに反応するナノロボット型細菌兵器が奪われる。CIAからの依頼を受けたボンドはスペクターの集会に乗り込み、細菌兵器のカギを握る科学者を拉致、その後サフィンという黒幕の存在を知る。

マドレーヌとふたりで新しい人生を始めようとしていたボンド。だが、居場所がばれたことでマドレーヌを疑わざるを得なくなる。やっと安息を手に入れたと思っていたのに、やっぱり誰も信じられないスパイの哀しい性。一方で、殺し屋の娘という重荷を背負って生きてきたマドレーヌもまた少女の時に受けたトラウマから抜け出せない。ふたりが再会した時の、忘れたはずなのにかすかに残っていた未練に、お互いに火が付く気まずさが印象的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、もうボンドに激しい肉弾戦は無理なのか、アクションは派手な銃撃と破壊がメインで切れ味に乏しい。爆弾の使い方もおかしいし。さらに、ブロフェルドの目となってボンドを狙う片目の殺し屋がいつの間にかサフィンの部下になる上、殺し屋と科学者の関係も理屈に合わない。また、カーチェイスはボディをぶつけるだけの大味な出来でまったく工夫がない。3時間近い上映時間を疾走する力業には敬服するが、時流に合わなくなってきているのでは。。。

監督     キャリー・ジョージ・フクナガ
出演     ダニエル・クレイグ/レイフ・ファインズ/レア・セドゥー/ベン・ウィショー/ジェフリー・ライト/アナ・デ・アルマス/デビッド・デンシック/ラシャーナ・リンチ/ラミ・マレック/クリストフ・ヴァルツ
ナンバー     176
オススメ度     ★★*


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