こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

県庁おもてなし課

otello2013-05-14

県庁おもてなし課

監督 三宅喜重
出演 錦戸亮/堀北真希/関めぐみ/甲本雅裕/松尾諭/高良健吾/船越英一郎
ナンバー 114
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

「仕事してぇー」と海に向かって叫ぶ県庁職員の主人公と臨時採用の助手。男は縦割り・予算制の弊害でいくら頑張ってもなかなか結果が出せず、“お役所仕事”の壁をぶち破りたいと思っている。一方、女はそんな彼のサポートにやりがいを感じつつも職を失うことを恐れている。一見同じ目標を目指しているが、少なくとも犯罪に手を染めない限り失職しない彼の安定した身分と、プロジェクトが終わると職探しをしなければならない彼女の不安定な未来には深い溝がある。正規職員と非正規職員、職務内容は大して変わらないのに待遇はまったく違う、このシーンに現代の雇用問題の縮図を見るようだった。

高知県庁で「おもてなし課」が立ち上げられ、若手職員の掛水は“民間感覚”導入のために資料室のバイト・多紀をスカウトし、観光コンサルタント・清遠を訪ねる。清遠はかつて県庁職員時代に「パンダ誘致」で失敗、県庁を追われた過去を持っていた。

清遠の打ち出す壮大なプランを実現すべく掛水と多紀は様々なリサーチを重ねつつ、清遠の娘・さわとの距離も縮めていく。その過程で、好人物だが他人の繊細な気持ちにまで心が回らない掛水と、それをたしなめる多紀の間で微妙な感情の齟齬が起きたり、流行作家の吉門が掛水と清遠親娘に接近したりしながら、豊かな自然に恵まれた高知県の魅力を紹介する。若手俳優にアクの強いベテランを絡めたテンポのよい展開は、観光PR色も濃くなくて心地よい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、観光特使に選ばれた吉門の身内である清遠をコンサルタントにするのはまずくないのか。吉門の推薦とはいえ監査が入れば痛くもない腹を探られる気がするが。また、スタジオからのTV生放送に一般人の掛水が飛び入り出演できるものだろうか。そのあたりのリアリティをもっと大切にしてもらいたかった。

オススメ度 ★★*

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