マッキー MAKKHI
監督 S・S・ラージャマウリ
出演 スディープ/サマンサ・ルス・プラブ/ナーニ
ナンバー 248
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
あいつだけは絶対に許さない! 殺された男の魂はハエとなって転生し、復讐の炎を燃やす。顔の周りに付きまとって寝かさない、道路に渋滞を起こして移動させない、運転の邪魔をして交通事故を起こす。愛する女を守るため、自らの恨みを晴らすため、持てる能力を最大限に発揮して敵に挑んでいく雄姿はコミカルだが哀しくもある。ハニカム構造の視界から見た人間の世界はすべてが巨大、その大きさの違いを逆に生かしてわずかな隙間から忍び込み、姿を隠し、意外なところから攻撃する。一方で精一杯のボディランゲージで恋人に思いを伝える。あくまでハエらしい外観にこだわりつつキュートさも失わないディテール豊かなCGが素晴らしい。
ビンドゥに片思いするジャニは何とか彼女の歓心を買おうといつも懸命。だが、ビンドゥは強欲な社長・スディープにも目をつけられ、追い回されていた。ある日、ビンドゥがジャニを誘ったことからスディープは激怒、ジャニを拉致してなぶり殺しにする。
登場人物の感情表現が非常に明確なうえ音楽で強調されるので、誰が見てもきちんとストーリーが理解できる構成は、いかにもインド映画。また、復讐という血なまぐさいテーマのなか、暴力がはびこり、銃弾が飛び交い、爆発が起き、ガラスや針が人体に刺さる痛みを伴う映像にもかかわらず、擬人化されたハエのユーモラスな動きが中和しているので残酷さをあまり感じさせない。どんな内容であれ映画はエンタテインメント、観客を心底楽しませなければならないといった思想が貫徹され、頭を空っぽにしてスクリーンに没頭できる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがてビンドゥは真実を知り、ジャニに力を貸す。殺虫剤が効かないように防毒マスクを作ったり、ハエ用のトレーニング機器をそろえたり、彼専用の部屋をコーディネートしたりと、ミニチュアアート作家らしい指先の器用さを見せる。特にジャニとビンドゥの愛の象徴となるハート形の鉛筆彫刻が、素朴な美しさを輝かせていた。
オススメ度 ★★★