レッド・ドーン RED DAWN
監督 ダン・ブラッドリー
出演 クリス・ヘムズワース/ジョシュ・ペック/ジョシュ・ハッチャーソン/エイドリアン・パリッキ/イザベル・ルーカス
ナンバー 252
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
轟音と共に目覚めると空挺部隊がパラシュートで降下してくる。平和な町はあっけなく制圧され市民は自由を奪われる。経済危機とサイバーテロで弱体化した防衛ラインはいとも簡単に破られ、敵の侵入を許してしまった米国。映画は、海外に派兵はしても、核ミサイル以外に本土が攻撃されるのを想定していない弱点を衝く。武装した兵士たちの前では警官ですら無力、だが祖国を守ろうとする勇者は必ず現れる。物語は、一度は山中に逃げた若者たちが解放軍を組織して、占領軍相手に戦う姿を描く。無理のある設定ながら、愛国心を鼓舞する効果は絶大だ。
田舎町の高校生・マットの元に海兵隊員の兄・ジェドが帰郷してくる。翌朝、北朝鮮軍が米国に侵攻、支配下に置くが、ジェドとマットは数人の友人と共に山小屋に隠れ、武器弾薬食料を集めて徹底抗戦を誓う。
彼らの中で銃の扱いに習熟し戦闘経験があるのはジェドひとり。ジェドは占領軍から強奪した小銃・爆弾でマットたち高校生を鍛え上げ、ゲリラ戦術を叩き込む。ウルヴァリンズと名乗った彼らは、町のあらゆる場所で爆弾を仕掛け、市民に紛れて奇襲をかけて見事に北朝鮮正規軍を出し抜く。ただ、統制のとれた軍隊が素人ゲリラ兵に手こずる様は先を急ぎすぎ。普通の高校生がこれほどの短期間でプロの兵士を倒すまでに熟練するのは、いかにもリアリティに欠ける。山中で出会った同志を誰何する際にカマをかけるなど、よほどの訓練を受けていないととっさにはできまい。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがてジャドたちの活躍を知った米国市民も次々に立ち上がり、ウルヴァリンズは抵抗軍の象徴となる。要するにこの作品は、かつてのベトナムや21世紀のイラク・アフガンでの米国の占領政策の裏返し。故郷を土足で踏みにじった外国人に間違いを思い知らせてやる、そんな不屈の魂を持った人間がいる限り、力による統治は早晩破たんすることを米国のタカ派指導者たちに逆説的に訴えているのだ。そのメッセージは皮肉に満ちているだけに強烈だった。
オススメ度 ★★