こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サンバ

otello2014-10-25

サンバ SAMBA

監督 エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ
出演 オマール・シー/シャルロット・ゲンズブール/タハール・ラヒム/イジア・イジュラン
ナンバー 247
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

単純な肉体労働で稼いだカネを故郷の家族に送っている真面目なアフリカ人が、ほんの小さなミスで身分を奪われ、収監されてしまう。働きすぎで燃え尽きたキャリアウーマンはそんな彼を救おうと奔走するが、残ったのは無力感ばかり。助けが必要な男と心の支えが欲しい女、物語は出稼ぎ労働者とフランス人支援者がお互いを補い合う関係に発展していく過程を描く。自分の事情の方が切実なのに相手の気持ちを慮り、友人の頼みは断らないけれど女には手が早い。自由と平等の国にやってきたのに著しく権利を制限された主人公の、笑顔を失わない生き方がすがすがしい。外国人就労者の悲惨な現実を告発しつつ夢や希望も大いに語る、ポジティブシンキングこそ未来をつかむとこの作品は教えてくれる。

サンバの担当となったボランティアのアリスは、彼が引き続きフランスに留まるための書類を集める。サンバは“国外退去命令”受け釈放されるが、再申請までの1年間待たなければならない。

トラブルを起こさないようにと大きな駅を避け、電車賃はきちんと払えと伯父に言われるサンバ。スーツや靴、鞄まで欧州人風に変えて街に出る。盗んだり傷つけたりしたことはない、ただ友との約束を果たそうとしているだけなのに、周囲の人の視線が気になって仕方がない。そのあたり、社会の最下層で“透明人間”として生きる不法滞在者の心理をリアルに再現する。パーティ会場から厨房の奥の洗い場にいるサンバまでワンショットでとらえる冒頭のシーンに、グローバル経済の生み出す格差が象徴されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてうつ病気味のアリスもサンバの精神的なタフネスに惹かれ始め、サンバもまた彼女の胸の傷を癒してやりたいと思い始める。一方で、自称ブラジル人のウィルソンと仲良くなったサンバは様々な現場仕事を経験する。もちろん警官に怪しまれれば即逮捕の状況で危険や悲劇にも直面する。それでも楽天的なサンバの姿に、人生を良くする秘訣が凝縮されていた。

オススメ度 ★★★

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