こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マザー・テレサ

otello2005-08-24

マザー・テレサ MOTHER TERESA

ポイント ★★*
DATE 05/8/18
THEATER シャンテ・シネ
監督 ファブリッツィオ・コスタ
ナンバー 100
出演 オリビア・ハッセー/セバスティアーノ・ソマ/ミハエル・メンドル/イングリッド・ルビオ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


一点の曇りもない青い眼で相手をじっと見つめる。一切の妥協を許さない強固な意志を相手にわからせることで、自らの「神の意志」を貫きとおす。瞳からあふれるエネルギーの塊はどんな反対意見をもつ者の心も溶かす。50年にわたるマザー・テレサのあふれんばかりのパワーを、オリビア・ハッセーは視線だけで見事に演じきる。小さな体に宿った大きな愛、考えるよりも目の前で困っている人を助ける。映画は聖女の人生を駆け足で追う。


1946年カルカッタ、修道院の学校で教師をしていたテレサは街で行き倒れになっている男が口にした言葉「私は乾いている」を耳にして、それを神の声と思い込む。修道院より街に出て貧しい人々の救済を始めたテレサは新しい教団を設立する決意をする。やがて教団が大きくなるにつれ、新たな困難がテレサを襲う。


ここで描かれるのはまさに等身大のテレサだ。貧者救済という信念の元、修道院内部での反対、地元との軋轢、財政問題など、すべて自らの行動で解決していく。一切の私心がなく、他人のために奉仕することこそ神から与えられた使命。その思いが彼女を突き動かす。自分の行動に絶対の自信を持ち、やがてその信念が協力者を増やすのだ。その一方で、いちいち食事や水の物の値段を聞き、そのカネを慈善事業にまわすように命令するようなせこい部分もきちんと描く。夢中で働いた若い頃から偏屈ばあさんに変貌する過程もおもしろい。


当然、彼女のあまりの独善に袂を分かつメンバーが出たり、名声を利用しようという人間も出てくる。組織が大きくなると当然会計的な雑事も出てくるのに、その発想はテレサにはない。さらに、彼女をサポートし教団の運営にかかわってきたメンバーの意見を無視し、勝手に教団を解散してしまう始末。自分の思い以上に大きくなってしまった組織をもてあました末、原点に戻ろうと決心するのだが、彼女が聞いた神の声よりもこのときの彼女自身の声を聞きたかった。


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