こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベネデッタ

聖母に祈りが通じてその声が聞こえた。主のヴィジョンが見えその傷が自らの体に現れた。現実なのか妄想なのか、確かに彼女には人知を超えた力が働いているように思える。物語は、中世のカトリック女子修道院で権力を握った女の欺瞞に満ちた半生を描く。少女のころに神の道を志願した。お勤めを続けるうちに信頼されるようになった。神との距離がいちばん近いと思い込むことでさまざまな体験をするようになった。やがて権力を欲するようになった彼女は、わが身の奇跡を証明するためにさまざまな証拠をでっちあげる。陶片で体を切り刻み、男の声色で怒り、仮死状態になる薬を使い、そして人の心を自在に操る。悪魔以上に悪魔的な知恵を巡らせ背徳と欺瞞の中に生きる、これが神に仕える者の本性、いやそれほどまでに神が俗っぽいのだ。

修道女となったベネデッタはイエスの花嫁になる幻覚を見る。その後、イエスの再生を体現するために自らの体に聖痕を刻むが、額の傷については自作自演だと異議を唱える者が現れる。

修道院に子供を引き取る時、親にカネを要求するフェリシア修道院長。その後も逃げ込んできた娘を匿うのにもカネのことを口にする。修道院経営のためなのはわかるが、もはや強欲な老婆にしか見えない。さらに、ベネデッタに地位を奪われると、彼女を追い落とすための謀略を張り巡らせるあたり、その権謀術数は聖職者ではなく俗物と変わらない。しかし。ベネデッタの軍門に下っても最後まで誇りだけは失わない。そんな鋼鉄の心を持った老修道女をシャーロット・ランプリングが毅然とした眼差しで演じていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

フェリシアはベネデッタと侍女のレズ行為を覗き見し、教皇大使が査問にやってくる。大使は彼女のペテンを見破っているのか小芝居に動じず、侍女を拷問にかけて有罪を引き出す。ところがベネデッタは足のノミで大使のペスト感染を知りフェリシアに告げることで大逆転を図る。あきらめずに危機を脱しようとする彼女の精神力は、本当に神が宿っていると思えるほど強靭だった。

監督     ポール・バーホーベン
出演     ビルジニー・エフィラ/シャーロット・ランプリング/ダフネ・パタキア/ランベール・ウィルソン/オリビエ・ラブルダン/ルイーズ・シュビヨット
ナンバー     31
オススメ度     ★★★★


↓公式サイト↓
https://klockworx-v.com/benedetta/
DATE     23/2/18