こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゼロ時間の謎

otello2008-01-09

ゼロ時間の謎


ポイント ★★
DATE 08/1/7
THEATER BUNKAMURAル・シネマ
監督 パスカル・トマ
ナンバー 4
出演 メルヴィル・プポー/キアラ・マストロヤンニ/ローラ・スメット/ダニエル・ダリュー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


防犯カメラもなく科学的捜査とも無縁、目に見える証拠と人間関係から殺人事件の犯人を推理する。当然容疑者は近親者に限られ、動機と凶器、アリバイから真実に迫っていく過程でサスペンスを盛り上げていく手法は余りにもオーソドックスで、古いミステリーを見ているようだ。やはり40年以上も前に書かれた作品の設定をそのまま現代に置き換えることには抵抗を覚える。小道具から風俗・習慣まで作品が書かれた当時のディテールを忠実に再現するくらいのこだわりを見せて欲しかった。


ギョームとカロリーヌ夫妻、ギョームの前妻・オード、カロリーヌの男友達・フレッド、親戚のトマ、弁護士のトレヴォースがブルターニュの別荘に住むカミーラの元にバカンスに訪れる。そして晩餐会の後トレヴォースが急死し、次いでカミーラも殺される。


カミーラの介護師・マリも含め残された全員が持つ、カミーラの遺産目当てという分かりやすい動機。だが、犯行現場にギョームのゴルフクラブや血のついたシャツという物証を残すなどという稚拙な偽装は、ギョームを罠にはめようとする人間の仕業と見せかけるギョーム自身の工作というのはミエミエ。この時点で犯人の目星はつくのだが、その動機にいたってはこじ付けとしか思えない。


容疑者全員を船上に集めたバタイユ警視の謎解きが始まり、真相が明らかになる。物的証拠と目撃証言を組み立て事実に迫っていく展開は、いかにも時代がかっていて新鮮味に乏しい。結局、ギョームが自分を捨てたオードを破滅させたいという一心で、カミーラ殺しの罪をオードにかぶせようとしたことがこの事件の全貌というのだ。ドンデン返しにしては説得力に欠け、ただ唖然とするばかり。もう少し登場人物それぞれが抱えている問題を浮き彫りにさせてくれないと、21世紀の感覚からはずれているというほかはない。せめて、原作が書かれた当時にはなかった小道具で新たな解釈を加えるくらいは許されたのではないだろうか。。。


↓メルマガ登録はこちらから↓