こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チーム・バチスタの栄光

otello2008-02-11

チーム・バチスタの栄光


ポイント ★★
DATE 08/2/10
THEATER THYK
監督 中村義洋
ナンバー 35
出演 竹内結子/阿部寛/吉川晃司/池内博之
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


メスで皮膚を切り、胸を開いて心臓を止め、心筋の一部を切り取る。そして縫合し、再び血液を流して鼓動が再開するのを待つ。一連の心臓手術の様子が克明に描かれるが、ひとつ間違えれば患者が命を落としかねないにも関わらず、静かに進んでいく。医者たちはみな冷静に自分の担当をこなしていく。あえてドラマティックにせず、その行程にリアリティを持たせることで緊張感を倍加させる演出はシャープだ。しかし、厚労省の役人が登場した瞬間そのテンションは途切れ、映画は安易な方向に流れていく。


心臓手術で抜群の成功率を誇る7人の専門家集団に失敗が続出する。そのチーム・バチスタ不振の内部調査に神経内科の田口が抜擢、彼女は独自に関係者に聞き取りを進めるが何も得られない。困惑しているところに厚生労働省の審議官・白鳥が乗り出してくる。


田口のレポートを元に白鳥がチームのメンバー1人ずつ尋問していくが、相手を怒らせて本音を引き出す手法がコミカルで面白い。ただ、そのあたりが原因もしくは犯人探しのミステリーとしての方向性と調和せず、物語から浮き上がっている。大病院に潜む悪意の病巣を取り除く過程の解説者より作品そのもののムードメイカーという役割のアプローチなのだが、阿部寛の大げさな演技が興をそぐ。特に登場時とエピローグのソフトボールシーンはまったく不要だった。


結局、手術失敗の原因はチームの執刀医の視力低下であると、白鳥は手術の録画映像で見抜く。これでは、最初から録画を見ていれば面倒くさい調査など必要なかったということではないか。さらに手術の失敗は殺人で、その真犯人が見つかるというどんでん返しがあるが、その動機は「殺人は娯楽」というあまりにも幼稚なもの。しかも以前に失敗した3例もこの男は自白してしまう。もはや証拠となる遺体は検視解剖もされず残っていないのだから、前3例にはシラを切り通せたはず。いかにもテレビ局製作というお手軽な結末には失笑を禁じえない。


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