こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

異動辞令は音楽隊!

部下や同僚には高圧的に振る舞い、上司には盾つく。己のやり方に固執するあまり時代の変化についていけず、気が付けば完全に周囲からはれ物扱い。物語は、強引な捜査で実績を上げてきた刑事が音楽隊に異動になり、人生を見直す姿を描く。すぐに刑事に戻れると思っていた。音楽隊では不貞腐れた態度を見せる。事件現場で門前払いを食って初めて必要とされていないと思い知る。自己主張ばかりが強く、すっかり時代遅れになっているのに、それを認めたくない。そんな昭和の体育会系主人公を阿部寛がウザいまでの熱さで演じていた。忠誠を尽くしてきた組織に裏切られた思い、新しい環境への不満、何より今まで仕事にかまけて目を背けてきた現実にきちんと向き合わなければならない戸惑いが、リアルに再現されていた。

さびれた事務所に席を与えられた成瀬は、ドラム担当に指名される。挫折感に苛まれ、他の団員ともなじめず、演奏会でも失敗ばかり。ある日、飲食店でトランペット担当の春子と鉢合わせする。

基本、団員は仕事と掛け持ちで勤務前後に練習している。ほぼ楽隊専属になった成瀬だが、頭の切り替えが進まず、新しい職場に居場所を作れない。民間の会社ならよくある話だが、警察も組織である以上同じようなことは起きると妙に共感してしまった。周りが若い者ばかりでも、新しい人間関係を築くにはまず腰を低くして周囲に受け入れられるように気を遣わなければならない。成瀬の言動は反面教師として非常に学ぶべきところがあった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

徐々にドラムに楽しみを見出す成瀬だが、若手団員からパワハラ告発が異動原因だとばらされ一触即発になる。だが、そこで見せた成瀬の対応は、人間はいくつになっても成長できると教えてくれる。その後、音楽隊解散の話が出たり、アポ電強盗の捜査に音楽隊として協力したり、娘や母親ときちんと向き合おうとしたりと、成瀬の日常は変わっていく。つきものが取れたような成瀬の柔和な表情には、充実したセカンドライフを送る秘訣が凝縮されていた。

監督     内田英治
出演     阿部寛/清野菜名/磯村勇斗/高杉真宙/板橋駿谷/ モトーラ世理奈/見上愛/光石研/倍賞美津子
ナンバー     100
オススメ度     ★★★*


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