ジェネラル・ルージュの凱旋
ポイント ★★
DATE 09/3/7
THEATER 109KH
監督 中村義洋
ナンバー 55
出演 竹内結子/阿部寛/堺雅人/高嶋政伸
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
医は仁術ではなく算術、まるでそう言い切るかのような病院経営者と幹部医師。患者を際限なく受け入れ、高価な薬漬けにし、通院を長引かせる。一方で高邁な理想を持ちながら、時に使命感ゆえに暴走してしまう医師もいる。大学付属病院という巨大な魔窟に巣食う病巣はいったい誰なのか、映画は病院内の主導権争いの内幕をベースに、窓際医師と高飛車な役人が汚職疑惑と関係者の死因を調べる過程でさらなる陰謀に出会うミステリー、さらに2人の少しテンポのズレたやり取りを加え、コミカルなサスペンスといった独特の世界を構築する。
急患をすべて受け入れることで周囲から異端視される救命救急センター長・速水と業者の癒着を告発する手紙が心療内科医・田口のもとに届く。内部調査を進めるうちに業者の営業マンが飛び降り自殺、そんなとき厚生労働省の白鳥が入院し、田口に力を貸す。
速水は独断専行で部下にも恨まれるほどだが腕は確かで、何よりも人命救助にしか興味がないような男。ほこりまみれの愛車が、もう何日も病院から外に出ていない事実を物語る。しかし、彼が孤立する原因となった10年前の多重交通事故の際、一介の医師である速水が上層部の許可も得ずに院内に非常事態宣言を出すが、それは許されることなのだろうか。現在も他人とのコミュニケーションと気配り不足で院内の人望は薄い。そのあたりの速水の人物像があまりにも社会性に欠けていて現実離れしている。
田口は早い段階で営業マンの録音を手に入れていたのに、なぜ出し惜しみしたのか。ヘリポートの監視カメラ映像も、速水のところになくても警備室に記録が残っているはず。営業マンの死を他殺と疑っているのならば、それらの証拠を警察に提出すれば犯人は簡単に見つかり真相も明らかになったに違いない。告発文の出所も予想外ではあるが、取ってつけたようなオチだった。ストーリーの意外な展開で観客の想定を裏切ろうとする試みは理解できるが、小手先の仕掛けに凝りすぎて整合性に欠けるのが致命的。そういった齟齬を、大火災で多数の重軽傷者が病院に運び込まれるシーンでうやむやにするが、その程度でごまかされるほど観客は甘くない。