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ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛

otello2008-05-26

ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛
THE CHRONICLES OF NARNIA: PRINCE CASPIAN


ポイント ★★★★
DATE 08/5/22
THEATER THRP
監督 アンドリュー・アダムソン
ナンバー 122
出演 ウィリアム・モーズリー/アナ・ポップルウェル/スキャンダー・ケインズ/ジョージー・ヘンリー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


巨大な投石器による石弾攻撃から突撃してくる騎馬部隊を落とし穴に足止めし、矢の雨を浴びせたあと退路を断ったと思ったら、今度は重装歩兵による反撃を受ける。クライマックスの大合戦シーン、ナルニア軍・テルマール軍双方の戦術が非常に実戦的だ。作戦を練り、準備を進め、その上で火蓋が切られる。勇猛を競うのではなく、どうすれば敵の陣形を崩して効果的に攻略できるのかをきちんと計算し、兵を動かす。さらに甲冑から剣、弓矢といったディテールにも神経が行き届き、白兵戦から全体像の俯瞰まであらゆる登場人物の動きがリアルに再現されるカメラワークとサウンドデザインは圧倒的な迫力だ。


テルマールの王子・カスピアンは後継者争いに敗れて荒廃したナルニア国に亡命、角笛に呼ばれ再びナルニアに戻ったベベンシー4兄妹と共に、テルマールの城を奇襲する。


テルマールは玉座を狙うミラース卿という男がカスピアン王子の命を狙うなど不安定。実権を握ったミラースも裏切りに合うように権力は磐石ではなく、彼らの人間らしい欲望の世界がじっくりと語られる。一方のナルニアの4兄妹も、本来敵国の王子であるカスピアンと手を組み、敵の敵は味方という理論で復興を図る。単純に二元論的に色分けするのではなく、善の中の悪の部分と悪の中の善の部分を描くことで複雑な心理を表現し、子供向けのファンタジーと一線を画している。


4兄妹は先頭に立って軍団を率いる器量を身に着けているだけでなく、テルマール城での戦いでは大勢の味方を見殺しにしなければならず、上に立つ者の苦悩も経験する。また、長男のピーターは戦略とはいえミラースに1対1の決闘を挑み、「第一の王」としての責任も強く自覚している。そのあたりの4人の成長が頼もしい。ただ、「困ったときのアスラン頼み」からは卒業して欲しかったが。あと、ピーターとスーザンの年長2人が、「もう戻らない」というのは、次回作ではナルニアに行かないということだろうか。。。

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