こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

幸せになるための27のドレス

otello2008-06-06

幸せになるための27のドレス 27 DRESSES


ポイント ★*
DATE 08/6/1
THEATER WMKH
監督 アン・フレッチャ
ナンバー 131
出演 キャサリン・ハイグル/ジェームズ・マースデン/エドワード・バーンズ/マリン・アッカーマン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


いつかは幸せな結婚をしたいと願っているのに、お人好の性格のせいでつい自分の恋は後回しにしてしまうヒロイン。仕事はできて友達も多いのに男には縁がなく、片思いの上司は横取りされる。そんな「がんばっています感」満々のワーキングウーマンを前面に押し出すことで女性客の共感を得ようとしているのは理解できるが、リアリティのないエピソードの連続のために「女のホンネ」という部分でも不発。唯一の見所が、彼女のクローゼットに納められた27着のパーティ用ドレスを次々に着替えてみせるファッションショーというのは少し寂しかった。


花嫁介添人ばかり頼まれるジェニーは、あるウェディングパーティで結婚式のレポートを専門に書くケビンという記者と知り合う。一方、ジェニーの妹・テスがジェニーの下に現れ、彼女が密かに思いを寄せるボスのジョージに急接近する。


ブライズメイドとして同じ時間に2件の結婚式を掛け持ちし、ふたつのパーティ会場をタクシーで忙しく行き来する冒頭のシーンからしてありえない設定だ。NY風とインド風のドレスを移動中に後部座席で着替えて何度も往復するという離れ業をコミカルに見せるのだが、いかにも脚本家の頭の中だけで完結したアイデアだ。さらにジェニーはジョージとテスの婚約をぶち壊すが、そのすぐ後で姉妹が仲直りするという安易な展開。


ジェニーはしつこく付きまとうケビンに徐々に心を開き大雨の中で結ばれるが、翌日のジェニーに関する新聞記事で大ケンカする。そこにはテスの悪口まで書かれている始末。取材対象に掲載日時を知らせずに記事にするなど普通はないし、挙式を控えたテスの悪口を書くなど、日本の常識では考えられない。おそらく米国でも同様だろう。おまけにケビンに対する気持ちに気付いたジェニーが、他人の結婚式に乱入して告白するなど、もうなんでもアリの世界になっている。あらゆるディテールが日常から乖離し、しかもそれが笑いを取るレベルにまで昇華し切れていないのがこの映画の失敗の原因だった。


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