こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リリィ、はちみつ色の秘密

otello2009-03-03

リリィ、はちみつ色の秘密 The Secret Life of Bees

ポイント ★★*
DATE 09/2/27
THEATER FOX
監督 ジーナ・プリンス=バイスウッド
ナンバー 48
出演 ダコタ・ファニング/ジェニファー・ハドソン/アリシア・キーズ/クイーン・ラティファ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


法の下では平等が保障されてもまだまだ黒人に対する差別が残っていた時代、人種を超えた友情や愛を成立させることが難しかった。南部ではリベラルな白人は少数、大多数の白人は暴力で黒人を押さえ込もうとする。いまや黒人を大統領に頂く米国において、ほんの数十年前まで普通にあった現実だ。もはや人々の記憶から消えかかり、歴史上の事実としてしか実感のない人種差別の「終わりの始まり」を白人少女の視線で描く。ただ黒人というだけで白人からまともな人間として扱われない理不尽さの前では無力でも、相手を愛し受け入れることで肌色の壁は乗り越えられると彼女は身をもって語る。


自分のミスで母・デボラを死なせたリリィは粗暴な父・T-レイと2人暮らし。ある日、母の思い出を傷つけられた彼女は黒人のメイド・ロザリンと共に家出、オーガストという黒人女性が経営する養蜂場に転がり込む。


オーガストが出荷する蜂蜜は高品質で評判がよく、彼女の一家は非常に裕福だ。貧困にあえぐ黒人・搾取する白人という構図はここにはなく、オーガストを取り巻く黒人も物質的には白人であるリリィ父子よりは恵まれている。むしろ黒い聖母像を崇めるなどある種のカルト的な信仰を持つオーガストたちは、精神的にもリリィより満たされている。白人弁護士を顧客に持つなど、オーガストは白人社会からも一応の尊敬は得ていたようだ。映画は、良心的な白人や豊かな黒人を登場させることでステレオタイプから脱却を図っている。


T-レイがリリィに冷淡なのは家を出たデボラに瓜二つだから。ならばオーガストはリリィを一目見て彼女が何者か理解し、リリィの嘘を見抜いたはずだ。彼女がリリィに真実をすぐに告げなかったのはリリィが家出してきた事情を察して、彼女がどんな娘かを観察していたからなのだろうか。リリィは、「自分が母に愛された子供かどうか」を知りたかったのだから、すぐに教えたやっても何の支障もないのにそうしない。そのあたりのオーガストの気持ちをもう少し掘り下げてほしかった。


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