こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リスペクト

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父は大好きだった。でも束縛されるのは嫌だった。当てつけに父の反対を押し切って結婚したけれど、夫は父以上に彼女を支配下に置こうとした。このままでは魂が死んでしまう。。。物語は、天才的な歌声で20世紀米国黒人音楽の頂点に君臨した女の半生を描く。幼いころから人前で美声を披露し聴衆を魅了してきた。聖職者である父のスピーチに同行し、信者の前で歌うのは神の祝福を一身に受けているようで誇らしく思えた。だが、成長後大都会に出てプロの歌手になると、男たちの様々な思惑に振り回される。センスは抜群なのに、目指すべき歌の道が見つからない。試行錯誤を繰り返すうちに、実生活での葛藤こそがテーマと見定める。“黒人” で “女性” という二重に抑圧されたヒロインが自由への渇望を高らかに歌い上げるシーンには圧倒された。

スカウトされてNYのレコード会社と契約したアレサは、なかなかヒット曲に恵まれず悶々とした日々を送っていた。ある日、先輩歌手から自分のスタイルを確立させろとアドバイスされる。

父はキング牧師の支持者でもあり、アレサも人種問題について思うところがある。一方、夫となったテッドは極端な反差別主義者で、白人プロデューサーとのちょっとした言葉尻を曲解しては難癖をつける。むしろ黒人の立場を利用して白人を食い物にする意図が透けて見える。差別されてきたことを武器にリベラルな白人に対して有利な条件を勝ち取ろうとする戦術なのだろうが、これでは長続きしないだろう。このあたりの人種差別問題の複雑さが印象的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

テッドはアレサに暴力を振るうようになり彼女の家を追い出される。そのころからアレサの孤独は深まり、アルコールが手放せなくなってバックコーラスを務める姉妹にまで傲慢な態度をとったりする。白人のメイドをこき使っているのも、彼女の白人に対する意趣返しなのか。そんな、歌手としての道のりだけでなくプライベートの毀誉褒貶にまで踏み込んだ脚本は、彼女の歌の意味をより深く理解させてくれた。

監督     リーズル・トミー
出演     ジェニファー・ハドソン/フォレスト・ウィテカー/マーロン・ウェイアンズ/オードラ・マクドナルド/マーク・マロン/スカイ・ダコタ・ターナー/メアリー・J・ブライジ
ナンバー     203
オススメ度     ★★★


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