こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

THE CODE/暗号

otello2009-04-12

THE CODE/暗号


ポイント ★★*
DATE 09/4/9
THEATER SC
監督 林海象
ナンバー 83
出演 尾上菊之助/稲森いずみ/松岡俊介/斉藤洋介
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


黒いスーツにネクタイ、黒い中折れ棒に黒縁めがね。同じようなコスチュームに身を包んだ探偵たちが、川崎市の各地に仕掛けられた爆弾のコードを解除していくプロローグは非常にスリリング。現代的な都市の風景とレトロモダンな探偵たちおよび探偵事務所内部の対比が鮮明で、この作品の持つスタイルを効果的に印象付ける。探偵はハイテクに頼らず、あくまで自分の足で情報を集め、自分の頭で整理・分析し、自分の手で事件を解決しなければならないという鉄則。主人公の武器は明晰な頭脳と古い007映画的な小道具だけの古典的な探偵像に対するこだわりが、過去にタイムスリップしたような独特の世界観を構築している。


暗号解読の天才・探偵507は依頼を受けて上海に飛び、依頼主の女・美蘭に接触する。彼女の背中に彫られた暗号は旧日本軍の財宝のありかを示し、近づいた者は次々と殺されてゆく。その背景に椎名という名の殺し屋が暗躍していた。


507が調査する場面は上海租界を連想させる。美蘭のドレス、南部式拳銃、妖しげな日本語を操る中国人、椎名の洗練された銃さばき。本来の舞台設定は戦後20年くらいを想定していたのだろうが、強引に21世紀に持ってくることで登場人物が年齢的にかなり不自然になるが、そのあたりはあえて言及せずに突っ走る展開は歯切れがいい。数字と記号に秘められた美しさと愛、そして父が娘に託した思いが暗号の謎を解くうちに明らかになっていく。


ただ、終盤になると登場人物の裏切りにつぐ裏切りで、物語は混乱する。せっかく507の活躍で財宝のありかにたどり着いたのに、上海ギャングや情報屋、さらには美蘭までが507に銃口を向ける。もはやこれはどんでん返しと言えるものではなく、ただの思いつき。椎名が美蘭の父だったというオチもとってつけたようだ。せっかくユニークなキャラクターと作品世界を持っていたのに、それを映画的な仕掛けとして昇華しきれていなかったのが残念だ。


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