こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版

モニターの向こうで男が突然死した。足首には歯型のような傷がある。体内からは狂犬病のウイルスが検出された。明らかに事件の匂いがする。物語は、遺族から真相究明を請け負った探偵と助手がさらなる謎と封印された過去を解く過程を描く。大金持ちだった男は、娘の不可解な誘拐事件の調査を依頼していた。山奥の廃坑に隠した金庫に現金と遺書を保管している。野生動物用の罠に守られた金庫は本人しか開けられない。仕掛けられたさまざまなトリックと張り巡らせた伏線。暗闇から現れた黒犬の目が光を反射しているのならまだしも、自ら赤く発光している安っぽさが、迷信を信じている者の思考パターンと恐怖をリアルに再現していた。その心理に付け込んだトラップが興味深かった。他人の人生を奪った罰は、命でしか贖えないのだ。

瀬戸内海の小島の中腹に建てられた豪邸に呼ばれた獅子雄と若宮は、蓮壁の妻、娘、息子、秘書、地震学准教授、リフォーム業者ら屋敷に出入りしていた人々の人間関係を洗う。

娘の紅は母や弟とうまくいっておらず家族の中で孤立している。豪邸に出入りするリフォーム業者は不必要なほど何度も見積もりを取る。准教授は紅に片思いしている。秘書は言葉少なに観察している。誰もが腹に一物を抱えていて、獅子雄は若宮を使い彼らの本音をあぶりだしていく。その過程で見せる抜群の観察力はほんのわずかな違和感を見逃さず、卓越した洞察力はそこから導かされる真実を容易に見透かす。科学捜査の発達した時代でも、警察が動けないグレーゾーンの犯罪ならばまだまだ名探偵が活躍する余地があるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、ひとりで廃坑に行った息子が死に、20年前に起きた赤ちゃん誘拐事件の顛末が明らかになると、事態は急変する。今さら事実を公表しても誰も信じてくれないだろう。だが、悲しみや怒り、恨みは晴らさなければならない。人を呪わば穴二つの覚悟もできている。そんな中、娘が生きていると信じて小学校から高校までの学用品を揃える親の思いが非常に切なかった。

監督     西谷弘
出演     ディーン・フジオカ/岩田剛典/新木優子/広末涼子/村上虹郎/渋川清彦/西村まさ彦/山田真歩/佐々木蔵之介/小泉孝太郎/稲森いずみ/椎名桔平
ナンバー     113
オススメ度     ★★*


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https://baskervilles-movie.jp/