こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハイキック・ガール

otello2009-04-14

ハイキック・ガール


ポイント ★★*
DATE 09/3/27
THEATER KT
監督 西冬彦
ナンバー 72
出演 武田梨奈/高橋龍輝/中達也
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ローからハイまで、蹴りの美しさに特化した格闘シーンに瞠目する。ヒロインが抜群のスピードと鞭のようなしなやかさで脚を操り、相手の急所をとらえる一瞬、一撃の痛みが伝わってくるようだ。予算も時間もあまりない中で、精一杯面白い映像を作ろうとする熱意が彼女のキックを通じてスクリーンから発散される。もはやストーリーや設定、登場人物の演技など二の次、ひたすら空手の魅力を描こうとする姿勢はワイヤーアクションを見なれた目には新鮮で、肉を打ち骨がぶつかる音も迫力満点。鍛え上げた格闘家の肉体の可能性を最大限に引き出すことに成功している。


女子高生の圭は「黒帯狩り」と称して他流試合ばかり繰り返している。ある日、壊し屋という武闘集団からスカウトされ入団試験を受ける。それは、彼女の師匠である松村をおびき寄せるための罠だった。


白のベストにミニスカート、紺のハイソックスという典型的な女子高生ファッションの圭が、自分より頭一つ背の高い男たちの顔面を脚でとらえる構図は非常にクールだ。ヌンチャクの使い方も洗練されていて本格的。そのあたり、映画用に考えられたアクションとは違うレベルの興奮を呼ぶ。ただ、圭を演じた武田梨奈だけでは物語が最後まで持たないと判断したのか、中達也という空手の師範を松村役に据え、壊し屋との戦いをほとんど彼に任せているところに不満が残る。それでも松村の闘い方は空手の「型」がいかに実践的であるかを証明していて、身のこなしは肉眼では追えないほどの速さ。いちいちスローで再生してくれるので、どんな技かが確認できるのがうれしい。


壊し屋に拉致された圭を救うために松村は壊し屋のアジトに向かう。そこがなんと学校の校舎と思われる建物。廊下で数人の刺客を倒した後、さらに体育館でクライマックスの大格闘技大会が繰り広げられるという安っぽさが泣かせる。だが、子分達はなかなか強いのに、壊し屋のリーダーがあっけなく倒されるのにはいささか肩透かしを食った。上映前に武田梨奈のライブパフォーマンスがあったが、キックの高さやキレは映画どおり。今後は本格的な空手アクションがこなせる女優に育ってほしい。


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