こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワイルド・スピード MAX

otello2009-07-07

ワイルド・スピード MAX FAST&FURIOUS

ポイント ★★*
DATE 09/7/6
THEATER THRP
監督 ジャスティン・リン
ナンバー 160
出演 ヴィン・ディーゼル/ポール・ウォーカー/ミシェル・ロドリゲス/ジョーダナ・ブリュースター
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


荒野の一本道をひた走る4台のタンクを従えた牽引車。この走行中のタンクローリーからタンク車のみを切り離し、盗もうとする。最後尾のタンクに女が飛び移り、2・3台めのジョイント部分を破壊して、背後から接合した自分たちのトラックに引っ張らせる。そんな、恐ろしいほどバカげたアイデアを実行に移し、カーアクションに昇華するプロローグは手に汗握る出来栄え。少々荒っぽさはあるが、スピードと力技でねじ伏せる圧倒的な迫力だった。


恋人を麻薬組織に殺されたドミニクは密かに帰国、組織に潜入する機会をうかがううちに、運転手を探しているという情報をつかむ。FBI捜査官として麻薬取引を取り締まるブライアンも麻薬組織に潜入するために運転手試験に臨む。やがて2人の壮絶なレースが始まる。


ドミニクの恋人と妹と仲間、そしてブライアンが揃った今回はシリーズ1作目の正統な続編。麻薬組織のボス・ブラガを追うという共通の目的に、かつての因縁をひとまずおいて共闘体制を取る。ブライアンはドミニクの男気に犯罪者の憎悪とは別の人間性に対する尊敬を抱いているが、ドミニクはブライアンをまだ少し疑いの目で見ている。ドライブテクニックと度胸を試す市街地の公道レースシーンは、男同士の微妙な感情がぶつかる大胆かつ繊細な映像だ。直線的な速さのほかにギアチェンジ、コーナーでのドリフト、他の一般車を巧みに避けながらゴール地点に向かって爆走する。自動車走行性能の限界まで引き出そうとするすさまじいアクションは、スピードに陶酔する2人の生き方が共鳴するようだった。


その後、2人はメキシコにいるブラガを拉致、ブラガの子分たちが大勢で2人の後を追跡する。しかし、その際のカーチェイスはだだっ広い平原に始まり狭いトンネル内に舞台を移すが、ただアクセルを踏み込むだけでスリリングな展開に乏しい。速度を競うような大味な映像が連続し、派手に悪党の車を爆破させるばかり。そこには車への愛が決定的に欠けており、ドミニクの、ブライアンの、自分で改造・整備した車を走らせる喜びが伝わってこなかった。


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