こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ケープタウン

otello2014-07-18

ケープタウン ZULU

監督 ジェローム・サル
出演 オーランド・ブルーム/フォレスト・ウィテカー/コンラッド・ケンプ
ナンバー 124
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

惨殺事件、新種の麻薬、次々に消える子供たち、過剰反応するギャング…。21世紀になっても富裕層と貧困層の格差は以前のまま、かえって政治的な自由と平等を黒人が手に入れた分犯罪も凶悪化が進んでいる。南アフリカ共和国有数の大都市、物語はこの町に巣食う腐敗した権力と闇社会の癒着を暴いていく。正常な判断力を奪う薬物以上に、警官を恐れず発砲してくるチンピラといまだ黒人の命を軽んじる白人たちに、治安という言葉の意味を再考させられる。黒人が這い上がるには悪事に手を染めるしかなく、それを利用した一部の白人が黒人たちを搾取する。もちろん差別を嫌う白人が大多数のはず、だが、黒人たちがおかれた状況はアパルトヘイト時代と大差ないのではと思わせるスラムの荒廃ぶりがリアルだった。

白人少女の撲殺死体が発見される。担当となったアリとブライアンは麻薬製造・密売組織を調べるうちに極端に暴力的なギャングたちの襲撃を受ける一方、製薬会社がかつて開発した“黒人だけを殺すドラッグ”の存在を知る。

澄み切った青空、どこまでも続く白砂、リゾート地のような美しいビーチなのにそこにたむろしているのは拳銃や小銃で武装したチンピラ。聞き込みに来た捜査員たちに残忍さを見せつけるかのようにアリの耳にナイフを突き立て、同僚刑事の腕を切り落とす。薬物の影響とはいえ、これほど凶暴で命知らずな悪党はハリウッド映画でも稀だ。ゆえに捜査員たちも“容疑者の権利”など一切無視して銃口を向ける者には銃弾を見舞う。W杯開催で近代化に成功したかに見える南アの、これが知られざる現実なのだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてブライアンは怪しげな警備会社に単身乗り込み重要な証拠を手に入れる。銃撃戦で被弾したアリも痛みにひるまず真相を追う。そして明らかになる真実。事件の解明の過程で繰り広げられる乾いたアクションよりも、新型向精神薬の被験者にされて死んだ子供たちが豚のえさになっていた場面が衝撃的。文明社会の出来事とは信じられなかった。

オススメ度 ★★*

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