こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ボーダー

otello2010-05-01

ボーダー Righteous Kill


ポイント ★*
監督 ジョン・アヴネット
出演 ロバート・デ・ニーロ/アル・パチーノ/50セント
ナンバー 104
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


映画史に名を残すハリウッドの功労者ともいうべき2大スターが演技の火花を散らし、謎と秘密、友情と裏切り、犯罪者と刑事、正義と銃弾といったサスペンスの必須アイテムがちりばめられた緊迫感あふれる映像、になるはずだった。しかし、デ・ニーロもパシーノも現場をはいずりまわる現役の捜査員を演じるには歳を取りすぎ体のキレがない。そもそもこの2人は「そこにいるだけ」で大いなる存在感を示すことができる俳優、それがどう見ても小物のヒラ刑事を演じるとは……。ミスキャストとはこの映画をいうのだろう。


タークとルースターはコンビを組んで30年のベテラン。ある日、逮捕されたにもかかわらず無罪判決を勝ち取った凶悪犯が射殺される事件が連続して起き、犯行の手口からタークが犯人と疑われる。やがて内務捜査員がタークの身辺を洗い始める。


物語はデ・ニーロ扮するタークを中心に回っていく。麻薬ディーラーへのおとり捜査、恋人との関係、ソフトボールの試合等、描かれるのはタークのエピソードばかり。パシーノ扮するルースターはタークに寄り添い、まるで彼の協力者のよう。ルースターがタークと同等の射撃の腕前を持つ以外は、その人となりはほとんど語られず、事件の核心を明かす部分になってようやくルースターに焦点が当たる構成で、スクリーンでのパワーバランスは完全にデ・ニーロが勝っていた。


その後、内務捜査員が麻薬ディーラーを使ってタークをハメようとするが、タークはそれを逆手にとって自身の潔白を証明する。ここで冒頭のタークによる告白映像が生きてくるのだが、なぜルースターはタークに自分の名前を騙らせたのだろう。ルースターにとって、やや直情径行ではあるが行動力にも胆力にも優れたタークこそ理想の刑事だったということか。だが、このビデオでタークに“デイブ”と名乗らせていたずらに見る者をミスリードするなど、ミステリーとしての仕掛けが拙く、脚本に問題が多い作品だった。