ポイント ★★★★
監督 イ・ユンギ
出演 チョン・ドヨン/ハ・ジョンウ/キム・ヘオク/キム・ジュンギ/キム・ヨンミン
ナンバー 35
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
自分はいったい彼のどこを見ていたのだろう。お調子者でお人よし、大ボラばかりでカネにだらしなく、何事も長続きしない甲斐性なし。そんな男と付き合っていてもロクな将来はないと思って別れたのに、もっと不幸になっている。ところが一年ぶりに会ってみると、やっぱり無職だけど周りの人々はみな彼に親切。映画は、強情でプライドが高い女が、元カレに付きまとううちに、人と人のつながりの大切さを学んでいく。眉間に皺を寄せた顔が徐々にゆるみ、最後には笑顔を取り戻す。それらのシーンが切なさとユーモアが交じった繊細な筆致で描かれる。
競馬場でビョンウンを見つけたヒスは、貸したままの350万ウォンを回収しようとする。ビョンウンは数人の知人に電話をかけ金策に走るが、その様子を観察していたヒスはビョンウンの知らなかった一面を知る。
女実業家、ホステス、スキー教室の教え子、幼馴染…。たとえ舌先三寸であっても、相手はビョンウンの訪問を楽しんでいる。きっとビョンウンは損得勘定抜きで過去に彼女たちから感謝されることを何度もしていたに違いない。女たちの表情からビョンウンの人柄がしのばれ、人の心に素直に飛び込んで行く彼の魅力をヒスが認識していく過程は、同時に観客にとっても驚きと発見の連続。そのウイットに富んだ構成と仕掛けには思わず膝を打った。
◆以下 結末に触れています◆
つらい目にあったときには誰もそばにいてくれなかった、でも今はビョンウンが隣にいてくれる。もはやヒスはカネを回収するより、ビョンウンと一緒にいる時間を少しでも長く伸ばしたいと願っている。ビョンウンに対する気持ちが高ぶっているのとは裏腹に、言いだせず結局車から彼を下してしまう。それでも、憂鬱な朝が素晴らしい一日になったことに気をよくしているヒスは、もう一度人生に立ち向かう勇気を得たようだった。テンポの良い会話と洗練されたカメラワーク、なによりビョンウンを演じたハ・ジョンウの前向きなキャラクターが明るい気分にさせてくれた。