こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

トランスフォーマー ダークサイド・ムーン

otello2011-07-09

トランスフォーマー ダークサイド・ムーン
Transformers:Dark of the Moon

ポイント ★★*
監督 マイケル・ベイ
出演 シャイア・ラブーフ/ロージー・ハンティントン・ホワイトレイ/ジョシュ・デュアメル/タイリース・ギブソン/ジョン・タトゥーロ/ジョン・マルコヴィッチ/パトリック・デンプシー
ナンバー 164
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


重量感あふれるロボットたちの肉弾戦にハイテク武装した米軍が入り混じる、砲弾と瓦礫が飛び交う市街戦。今回も修羅場に飛び込んだ登場人物たちが味わう興奮とスリル、恐怖と使命感を観客にも体験させてくれる。客席を取り囲むような重低音は圧倒的な迫力で空気を震わせ、さらに3Dでパワーアップされた映像は、ただ感覚器官を解放して一方的に刺激を受け入れることを要求する。もはやこの映画に関しては下手な理屈やツッコミは無用、思考を放棄してジェットコースターに乗っている気分になれば2時間半を超える上映時間はあっという間に過ぎていく。


1960年代、月の裏側に不時着したエイリアンの宇宙船を調査しようと米ソは宇宙開発競争を繰り広げ、アポロ11号から月面に降り立った2人の宇宙飛行士は金属生命体を発見する。彼は最先端技術の開発者・センチネル、40年後彼はオートボットオプティマスによって覚醒させられる。


ケネディ大統領まで引っ張り出してきて、アポロ計画の裏にあった知られざる目的を描こうとするが、そのディテールへのこだわりこそホラ話の真髄。物語もサムとオートボットたちの友情の範疇を超え、地球侵略をめぐる巨大な陰謀の様相を呈してくる。だが、そのあたりの人物描写や背景説明は非常に駆け足で、新たなキャラクターの位置づけがイマイチ分かりづらい。というか、もともとそういった人間的なドラマを語ろうとする意図はさらさらないようだ。


◆以下 結末に触れています◆


やがてセンチネルと好戦派トランスフォマー・メガトロンの密約が明らかになり、またしても地球が彼らの戦場になる。地球を第二の故郷にしようとするセンチネル、彼の威光に便乗するメガトロン、そして人類を守ろうとするオプティマス。ラスト30分はスクリーン上で何が起きているかを正確に把握できないほど混沌としているが、それでも画面の隅々にまで神経の生き届いた表現力はCGの最新技術力の見本市のよう。このスケールの大きさが、他国の映画製作者やTVの追随を許さないハリウッドの底力なのだ。まあ、ゴールデンラズベリー賞にノミネートされるのは確実と思うが。。。