こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カンパニー・メン

otello2011-09-10

カンパニー・メン THE COMPANY MEN

ポイント ★★★
監督 ジョン・ウェルズ
出演 ベン・アフレック/クリス・クーパー/ケヴィン・コスナー/マリア・ベロ/ローズマリー・デウィッド/トミー・リー・ジョーンズ
ナンバー 210
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


高級住宅街の豪邸に住みポルシェを乗り回す男が、社会情勢の変化で一瞬にして職を失う。エリートの矜持は再就職の邪魔にしかならず、迫りくる無収入の日々への恐怖を忘れようと消費行動をやめない。失業の現実を直視できない主人公とは対照的に彼の妻子は窮乏生活への準備を進めている。物語は、会社一筋に生きてきた男たちが、そのよりどころを奪われたときに胸をよぎる感情をリアルに再現する。“なぜオレがクビに”という驚きは怒りに変わり、“きっと見返してやる”という思いは不採用が続くうちにあきらめから絶望になっていく。そんな人生のどん底で、家族の理解と支えがいかに励みになるかをこの作品は教えてくれる。


大企業のセールスマネージャー・ボビーはリーマンショック直後にリストラされ、再就職支援センターに通い始める。しかし、マッチする求人はほとんどなく、面接にこぎつけても噛みあわない。やがて失業手当も尽き、家も愛車も手放す羽目になる。


優秀な自分ならばすぐに新しいポストは見つかると考えていたボビーの思い上がりは不採用の連続でズタズタにされ、一家を養う必要から義兄の大工仕事を手伝うようになる。どこか肉体労働を見下していたボビーにとって、それはプライドを捨てることなのだが、一方で誰にでもできると思っていた単純作業でも、プライドと責任感を持って取り組んでいる人間がいることを知る。ボビーは豊かな消費生活がこうした人々の低賃金労働の上に成り立っていたと気づき、額に汗して体を使う充実感も手に入れる。


◆以下 結末に触れています◆


昔日の繁栄した面影は跡形もなく荒れ果てた廃工場群は、マネーゲームに奔走したあげく働く尊さを忘れてしまった米国人の象徴。映画はボビーに製造業の素晴らしさを学ばせた後、新たな会社の再スタートに参加させる。かつてのドックヤードの一室にオフィスを構える姿からは、もはや新興国への工場移転のトレンドには抗えなくても、従業員を大切にしながらもモノづくりにチャレンジする企業にしようとするボビーたちの意気込みが感じられた。