こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワイルド7

otello2011-12-23

ワイルド7

ポイント ★★
監督 羽住英一郎
出演 瑛太/椎名桔平/丸山隆平/阿部力/宇梶剛士/平山祐介/松本実/要潤/本仮屋ユイカ/中原丈雄/吉田鋼太郎/深田恭子/中井貴一
ナンバー 302
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「お前ら全員退治する」。警察の手に負えなくなった凶暴犯に容赦なく引き金を引く男たち。殺人マシーンとして訓練を受け命令通りに行動するよう再教育された7人の元犯罪者は、超法規的存在として事件解決のためなら犯人の殺害を認められている。大型トレーラーでクルマをけちらし蹴散らしバイクで突撃する映像は、重量感に溢れ現場の振動がスクリーンから伝わってくるようだ。ところが、ストーリーの構成は稚拙な上、肝心のアクションシーンも無闇に銃弾をぶっ放すだけの芸のなさ。もちろん初めから荒唐無稽な物語なのはわかっている、だがきちんとした世界観が作品の中で構築されていないせいで、派手な爆音がむなしく響く。


武装銀行強盗やウイルス兵器による大規模テロを未然に防いだ警察の極秘部隊・ワイルド7は、司令官の草波が国民総監視化を目指すPSU長官・桐生と対立したのが原因で、身分を奪われ指名手配される。


並行して、ワイルド7の獲物を横取りする謎の殺し屋が現れたり、リーダー格の飛葉とウエイトレスとのユキとの交流が盛り込まれる。しかし場当たり的な展開は、殺し屋が早々と正体を明かしてしまうなどミステリー的な味わいもほとんどない。どうせならばワイルド7のメンバーをもっとクールでスタイリッシュに描くなど、見る者が感情移入できるようなキャラクターにして、少なくとも大量の銃弾と爆破による爽快感くらいはほしかった。


◆以下 結末に触れています◆


桐生が犯罪情報を株取引に利用して巨額の利益を上げていたことを知った草波とワイルド7は、ターゲットを桐生に定めてセキュリティ厳重なPTS本部を襲撃する。その際も、桐生たちはワイルド7の動きを事前に察知しているにもかかわらずトレーラーの暴走を許すし、一方ワイルド7側も重装備の機動隊数十人で防御を固めたPSU本部ビルを攻撃するのに何の戦術もなくただ正面から銃弾・砲弾と共に突入するばかり。そこには手に汗握る緊張も息をのむ躍動感も死と暴力の美学もアッと驚くアイデアもない。もう少し丁寧に作ってほしかった。


↓公式サイト↓