フェイシズ Faces in the Crowd
オススメ度 ★★*
監督 ジュリアン・マニャ
出演 ミラ・ジョボビッチ/ジュリアン・マクマホン/サラ・ウェイン・キャリーズ/マイケル・シャンクス/デビッド・アトラッキ
ナンバー 60
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
普段他人を見分けるとき、その人の顔自体の作りにどの程度依存しているのか。一度会えば忘れないほどの美女やイケメン、またはその逆ならば印象に残る。ところが、大して特徴のない人の場合、ひげ、髪型、メガネ、身長、体型、肌色、服装の趣味といったポイントで記憶にとどめているはずだ。物語は、脳の一部に損傷を受け、人の顔を知覚できなくなったヒロインに殺人鬼の手が迫っていく過程で、人間の識別機能の盲点を突いていく。なんとなく思い出せるが顔と名前が一致しない経験は誰にでもあるだろう、映像はそこから一歩踏み込んでまったく他人の顔を覚えられなくなった女の不安をリアルに再現する。
ビジネスマンのブライスと同棲するアンナは、ある夜連続殺人鬼の犯行現場に出くわし襲われる。必死に抵抗し命は助かるが、頭に受けた衝撃が元で相貌失認となってしまう。事件の担当になった刑事・ケレストやプロファイラ―のラニヨンらがアンナの証言を得ようとする。
見舞いに来たブライスをはじめ仲のよかった女友だちも誰だかわからない。しかし、彼らとはどういう関係なのかは把握している。そこでネクタイなどの細部を観察した情報を元に相手を認識するトレーニングをアンナは受ける。一方で、鏡に映る自分の顔が不気味に歪んだりと、彼女の感情は決して安定しない。そして最大の恐怖は、殺人鬼はアンナを特定できるが、アンナは殺人鬼の顔に気づかないという事実。殺人鬼はジワジワとアンナに近づいていく。
◆以下 結末に触れています◆
映画は、アンナが殺人鬼の影に脅えながら錯乱し苦悩する姿を、彼女をめぐる3人の男たちの顔が次々に入れかわる手法で見せる。アンナから見れば彼らの顔の違いに意味がないことを表現しているのだが、彼女の主観だけでなく客観的な描写でも3人にあえて同じような表情をさせる演出はいたずらに見る者を混乱させるばかり。相貌失認は症例が少なく謎の多い症状らしいが、声や話し方、体臭や癖など顔以外の部分で愛する人や親しい人は判別できると思うが。。。