キラー・エリート KILLER ELITE
オススメ度 ★★★*
監督 ゲイリー・マッケンドリー
出演 ジェイソン・ステイサム/クライヴ・オーウェン/ロバート・デ・ニーロ/イヴォンヌ・ストラホフスキー/ドミニク・パーセル
ナンバー 64
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
狙った標的は確実に仕留めるのに無抵抗な者に引き金を引くのは躊躇してしまう、冷酷無比な殺人マシーンになりきれない殺し屋。かつての相棒を救うため、愛する女を守るため、男は一度足を洗った血塗られた仕事に戻ってくる。そんな彼を待ち受けるのは鍛え上げられた陸軍の精鋭たち。物語は再び暗殺者となった男と彼を阻止しようとする男の対決を軸に、憎悪と復讐・裏切りと欺瞞に満ちた裏の世界を描く。体が激突し骨がきしむ格闘、心臓の鼓動が聞こえるような逃走、そして危機に次ぐ危機のカーチェイス。暗殺を実行するそれらのアクションはリアリティと緊迫感にあふれ、思わず息をのむ迫力となってスクリーンから迸ってくる。
引退した殺し屋・ダニーの元に、英軍特殊部隊・SASの将校3人を事故に見せて殺せとの依頼が来る。ダニーは早速仲間を集めターゲットを絞りだし1人目を始末するが、彼らの動きはSAS隊員OBで構成される組織・フェザーに察知され、元隊員のスパイクが送りこまれる。
お互いに素性を知らぬまま現場で姿を認めあうダニーとスパイク。対峙する前から相手に同業者の臭いを感じ、只者ではないことを見抜いている。2人が初めて直接顔を合わせる病院道具室の場面は、映画的な洗練とはかけ離れた泥臭く実戦的な格闘術の応酬。血まみれになりながら蹴りやパンチを出し続ける様は、肉体的な痛みが伝わってくる。また、ターゲットにインシュリンを飲ませたり交通事故を偽装するシーンは、失敗と紙一重の危うさを孕み、手に汗握るほどスリリングだった。
◆以下 結末に触れています◆
やがてダニーはクライアントの度を越した要求に怒りを抑えきれなくなり、スパイクもフェザーから作戦の中止を命じられる。彼らの技能が必要な時は重宝されるが、少し風向きが変わると簡単に切られる。“所詮自分たちは使い捨ての道具に過ぎない”その思いを共有する2人の間に友情に近い感情が芽生える展開からは、現場工作員の現実と不器用な生き方しかできない男たちの悲哀がにじみ出ていた。