こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジェーン・エア

otello2012-05-22

ジェーン・エア JANE EYRE

オススメ度 ★★*
監督 キャリー・ジョージ・フクナガ
出演 ミア・ワシコウスカ/マイケル・ファスベンダー/ジェイミー・ベル/ジュディ・デンチ
ナンバー 95
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

真一文字結んだ口と眉間に寄せた深いシワ、それはひとりで生きてきた女の強い意志のあらわれ。どんよりと重たげな空と揺らめくろうそくの炎は、彼女が感じた19世紀前半の社会の雰囲気を象徴する。まだ電気もガスもなくもちろん女性の人権が制限されていた時代、大英帝国の繁栄とは裏腹に、伝統としきたりにがんじがらめにされた身の縛めを自らの力で解いていくヒロイン。決していいなりにならず、不器用ながら己の感情に正直に振る舞い、自分の人生を自分で選択する。現代では当たり前のことができなかった当時の空気を濃厚に凝縮した映像は、緊張の中にも気品を湛えていた。

孤児のジェーンは伯母の家に引き取られるが、伯母との折り合いが悪く寄宿学校に入れられ、そこでも先生から厳しい指導を受ける。その後、貴族の屋敷で住み込みの家庭教師を務めるうち、館の主・ロチェスターを落馬させてしまう。

伯母に“性根の悪い嘘つき”のレッテルを貼られたジェーンは学校でも友人ができず、唯一優しく接してくれた友人もほどなく死ぬ。少女期に大切にされずに育ち、他人に心を閉ざしていたジェーンだが、ロチェスターは彼女の知性と媚びない態度が気に入り、徐々にお互いの理解を深めていく。そして、ロチェスターに告白されるとジェーンはやっと満面の笑みを見せる。決して容姿に恵まれず異性と出会う機会もなかったのだろう、おそらく初めて男に好意を持たれた、しかも恋した相手からというシチュエーションに舞い上がるジェーンの表情の変化が楽しい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

結婚式の日、ロチェスターの秘密を知ったジェーンは屋敷を逃げ出し、絶望の果てに牧師のジョンに助けられ、村で教師の職を得た後に彼からプロポーズされる。だが人格高潔で使命に燃えるジョンより、あくまで対等の人間として扱い人格を尊重してくれたロチェスターが忘れられないジェーン。愛に殉じるのではなく愛する人の苦悩を共に引き受ける、この古典に描かれた自己犠牲的生き方こそが21世紀の観客に求められているのではないだろうか。。。

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