博士と彼女のセオリー THE THEORY OF EVERYTHING
監督 ジェームズ・マーシュ
出演 エディ・レッドメイン/フェリシティ・ジョーンズ/チャーリー・コックス/エミリー・ワトソン/サイモン・マクバーニー/デビッド・シューリス
ナンバー 62
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
アイデアの海はどこまでも泳げるのに、体の自由は奪われていく。変わらぬ愛を誓ったはずの妻の気持ちも、いつしか他の男に移ろいゆく。研究室では時間の始まりにまでさかのぼるのに、懐かしい日々には戻れない。物語は難病に侵された主人公が妻の献身で画期的な新説を導く過程を描く。古典物理学では説明できない宇宙の実体、ブラックホールと特異点、何よりも、われわれはなぜここにいるのかという問いに対する答えを彼は模索する。一方で論理優先の科学の世界とは違い、夫婦や親子といった家族の思いは数式では表せない感情で結びついている。そして筋肉が動かせないのに子作りはできる皮肉。時空の起源という究極の謎も心という人間存在の定義も、等しく“真実”として扱う映画の姿勢に好感が持てる。
宇宙物理学を専攻するスティーヴンはジェーンと恋に落ちるが、ALSが発症し余命2年を宣告される。ジェーンはスティーヴンを支えると宣言、ふたりは結婚する。その後、「時空の特異点」に関する論文で博士号を取得する。
病気の進行は止まらないが、ジェーンの介護のおかげでアカデミックな実績を残していくスティーヴン。それでも、子供が2人になるともはや家庭はジェーンひとりの手に負えなくなる。いらだちが募っていた時知り合ったジョナサンはスティーヴンの世話をいとわず彼らの子供の面倒も見る。いまや、気鋭の学者となったスティーヴンとの距離を感じていたジェーンは、ジョナサンの優しさに安堵を見出していく。そこでスティーヴンが見せる嫉妬と残酷な仕打ち。IQは抜群でもEQは人並みの彼の俗物的な一面がかえって魅力的だった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがて声を失ったスティーヴンは新たな介護士・エレインを雇い入れ、ジェーンを必要としなくなる。物質も肉体も精神も不変なものはない、ふたりの関係はそんな“万物の法則”を象徴していた。発声装置で「デイジー」を歌うのは、彼もキューブリックの傑作に影響を受けていたからなのか?
オススメ度 ★★★