砂漠でサーモン・フィッシング
SALMON FISHING IN THE YEMEN
監督 ラッセ・ハルストレム
出演 ユアン・マクレガー/エミリー・ブラント/クリスティン・スコット・トーマス/アムール・ワケド
ナンバー 250
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
あまりにも壮大で、可能性は“火星に人が立つ”程度。途方もないプロジェクトを実現させるのは信じる心と強い意志。物語は、砂漠の国にダムを造った男が下流にサケ釣りを楽しむための環境を作ろうとし、計画を託された男女が悪戦苦闘しながら奔走する姿を描く。常識で考えれば絶対に無理、だがケタ外れの財力を背景に夢と理想を語り、それを実行に移し、人を動かす。その過程とキャラクター設定は全篇人間味とユーモアにあふれ、“熱血感動巨編”とは一線を画しているところに好感が持てる。
イエメンの豪族・シャイフから“サケ放流計画”を請け負ったコンサルタントのハリエットは、水産専門家のジョーンズ博士に相談するが不可能と断言される。それでもジョーンズが出した条件をクリアしていくうちに首相広報官・パトリシアの耳に入り、政府の後押しを得る。
ビジネスにおいては非常に頭の回転が速く行動力のあるハリエット。母親としても官僚としても常に戦闘モードを崩さないパトリシア。2人の女に対して、研究以外には興味を持たず厄介事を押し付けられたと思っているジョーンズと、カネは出すが悠然と構えているシャイフ。現場を仕切りてきぱき指示を出すアグレッシブな女たちと、のんびり釣りに興じる男たちが対照的だ。元気な女たちに細かいことは任したほうが万事つつがない、そんな男たちの余裕がうらやましい。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
しかし、軍人の恋人が戦場で行方不明の知らせが入り、ハリエットは仕事が手につかなくなる。あれほど有能だったのに公私の切り替えが効かず、スケジュールに穴をあけジョーンズに心配をかけるハリエット。弱さを見せるハリエットにそっと手を差し伸べるジョーンズも妻とは破局寸前。ふたりの関係が急速に接近していくうちに、プロジェクトの成功以上に恋のなりゆきが気になってくる。離れて暮らしているよりも同じ目標を追って同じ時間を過ごす、きっと男女の仲もその方がうまくいく。映画は彼らを通じて、生きる喜びとは何かを再認識させてくれた。
オススメ度 ★★★