こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スプリング・ブレイカーズ

otello2013-03-27

スプリング・ブレイカーズ SPRING BREAKERS

監督 ハーモニー・コリン
出演 ジェームズ・フランコ/セレーナ・ゴメス/ヴァネッサ・ハジェンズ/アシュレイ・ベンソン/レイチェル・コリン
ナンバー 68
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

酒とドラッグとお祭り騒ぎ。燦々と降り注ぐ陽光の下ではしゃぎまわる4人の女子大生は “これぞ人生の醍醐味” と錯覚する。退屈な日常から逃避し、自分たちは特別な存在だと思い込んで昂揚感に酔いしれる。束の間の幻影だとわかっている、映画はそれでも現実に目を背けて生きようとする鮮烈な青春をスクリーンに焼き付ける。各々のエピソードを深く語るよりも彼女たちの心象風景のみで綴ったサイケデリックでエッジの効いた映像は、トリップする興奮と一瞬輝く花火のようなはかなさに満ち溢れ、強烈なインパクトを残す。

キャンディ、ブリット、コティ、フェイスの仲良し4人組は春休みにフロリダ旅行に出かけ、ビーチやホテルでパーティに明け暮れるが、ドラッグ吸引で逮捕されてしまう。保釈金が払えず困っていると、エイリアンと名乗る男に助けてもらい、彼とつるみ始める。

元々旅行資金の出所に嫌悪感を覚えていたフェイスは、生粋の犯罪者であるエイリアンの価値観についていけずフロリダを去る。残った3人はピンクのマスクで顔を隠しエイリアンとともに強盗を繰り返す。閉塞感に苛まれているわけではない、学生生活に刺激が足りないだけ。自暴自棄になるのではない、やり場のない怒りをぶつけているのでもない、その時のノリで暴走してしまう。にもかかわらず彼女たちのエネルギーが破滅的な切なさを発散させるのは、夢を持てなくなった社会に対する勝ち目のないプロテストであることが分かっているからなのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてエイリアンたちは敵対組織に目を着けられ、抗争に発展する。もはや命の危険さえ冒している。銃撃を受けたコティも脱落するが、キャンディとブリットはエイリアンと行動を共にする。確かにキャンディとブリットは友情で結ばれている、しかしエイリアンとの間にあるのは不思議な信頼と共闘関係。今がスリリングなら未来なんかいらない、そんな刹那的な心情がヒリヒリするほどリアルに伝わってくる作品だった。

オススメ度 ★★★*

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