整理整頓、習慣と日課、やるべきことリストを常に持ち歩き家事は完璧にやり遂げる。でもいつもしかめっ面で冗談も通じず、一緒にいると気づまりになるばかり。物語は40年以上も主婦業に専念してきた老女が夫の浮気を機に新たな人生に挑戦する姿を描く。就業経験のないヒロインがやっと紹介してもらえたのは青少年センターの管理と少年サッカーチームのコーチ。もう後戻りできない彼女は、サッカーのルールも理解しないまま引き受ける。家庭内は知り尽くしていても世間知はゼロに近い、しかも生意気な子供たちにも相対しなければならない。63歳にして初めて生活のために働く体験した彼女が、周囲の人々に支えられて徐々に環境に馴染んでいく過程は、何歳になっても人間は成長できると教えてくれる。
田舎町にひとりでやってきたブリットは、荒れ果てたユースセンターに寝泊まりしながら子供たちにサッカーを教える日々。しかし、コーチのライセンスがないのを理由に廃止を宣告される。
散らかり放題の物置や娯楽室を片付けるところから始めるブリット。子供たちは完全にブリットを舐め切っていてほとんど言うことを聞かない。エースストライカーのヴェガを除いて練習もあまりやる気がなく、サッカーは遊び程度の認識しかない。だが少しずつコーチ法を学び実践していくうちに子供たちから理解されるようになる。思い通りにはいかないけれど、毎日進歩はしている。そんな実感がブリットを生き生きと変えていく。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ところが思わぬ横やりが入り、サッカー大会の出場が危ぶまれる事態になる。そこでヴェガに意見を求めるブリット。10歳の少女にあきらめずに戦えと諭されるシーンは、ブリットがいかに困難を避けた日常を送ってきたかを暗示する。そして、勇気を振り絞ったブリットは、村人たちとコミュニケーションを取り難局を乗り切っていく。最高の結果は出なかったけれど最善は尽くした。やり切った感があふれ眉間から険が取れたブリットの柔らかな表情が、彼女の明るい未来を象徴していた。
監督 ツヴァ・ノヴォトニー
出演 ペルニラ・アウグスト/ペーテル・ハーベル/ウッレ・サッリ/ベラ・ヴィタリ
ナンバー 115
オススメ度 ★★*