こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホワイトハウス・ダウン

otello2013-08-18

ホワイトハウス・ダウン WHITE HOUSE DOWN

監督 ローランド・エメリッヒ
出演 チャニング・テイタム/ジェイミー・フォックス/マギー・ギレンホール
ナンバー 203
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

世界のほぼ全域を影響下に置き、実質的に地球でいちばん権力を持つ人間である米国大統領。選ばれる過程は日本でも詳しく報道されるが、大統領が在職中に死亡・辞職した場合は副大統領が後継につき、さらに新大統領も職務不能になったとき上院議長が大統領権限を引き継ぐ規定はほとんど知られていない。前任者が機能不全に陥ったと確認されると数名の閣僚の前で宣誓するだけで大統領の地位に就く。もちろん非常事態に煩雑な手続きを踏んでいられない事情はわかるが、選挙戦が国を挙げての祭りなのに比べあまりにもあっけなく決まってしまう落差が新鮮だった。

シークレットサービス入隊希望のジョンが娘のエミリーと共にホワイトハウスを訪問中に、テロリストが侵入、大統領を人質にとって立てこもる。ジョンは咄嗟の判断で大統領を奪還、2人で迷路のような建物内を逃げ回りながらテロリストを倒していく。

鉄壁の防御を誇るホワイトハウスも、内部から裏切り者に手引きされると簡単に陥落、圧倒的な火力を手にいれた傭兵集団相手に外部からの攻撃はことごとく跳ね返される。一方で、中枢部のコンピューターをハッキングし核発射コードを盗もうとする。その、拳銃・小銃から重火器まで銃撃・砲撃と破壊の限りを尽くす物量にものを言わせた展開は既視感にあふれ、大味な絵空事にしか見えなかった。唯一、エミリーの生意気な態度と危険を顧みぬ機転が物語にスパイスを利かせていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、テロリストの黒幕が敵対国家・集団ではなく米国内の軍需産業を牛耳るネオコンという設定に、右傾化する現在の日本の姿を重ねてしまう。誰もが平和を願う思いを口にする、だが戦争を飯のタネにする人々が少なからずいるのも事実。彼らにとって“外敵の脅威”がなくなるのは失業を意味する。北朝鮮核武装と、中国・韓国が領土領海侵犯を繰り返し憲法改正が現実味を帯びつつある昨今、自衛隊防衛省と関連が深い企業や政治家・役人の中から、こういう輩が現れないとは限らない。そう考えると身につまされるテーマだった。

オススメ度 ★★*

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