こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

美輪明宏ドキュメンタリー 〜黒蜥蜴を探して〜

otello2013-08-19

美輪明宏ドキュメンタリー 〜黒蜥蜴を探して〜

監督 パスカル=アレックス・ヴァンサン
出演 美輪明宏/横尾忠則/深作欣二/北野武/宮崎駿
ナンバー 187
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ブロンドの長髪、年老いた魔女のような外見なのに、男性名を名乗っている。この人の人生を知らない世代の者にとって、男なのか女なのか、同性愛者なのか女装趣味なのか、直接本人に聞いてみたい謎は尽きない。映画は、彼が“女優”として出演した古い日本映画を見たフランス人映像作家が、美しく妖艶な姿に隠された素顔に迫る過程を追う。美少年歌手・俳優デビューした後、いち早く「女であること」に目覚め、性の先駆者となって20世紀後半から21世紀の現在まで走り続けてきた彼の半生は、波乱と刺激に満ちている。

1957年に丸山明宏の名で映画に出た三輪は小柄ゆえ女装に活路を見出し、それ以来女らしさを追求し始める。次第に世間は彼を“女優”と認知し始め、’70年代になるとそのスタイルは輝きを増し始める。

まだ同性愛がタブー視されていた当時、三輪は心無い人から「バケモノ」「死ね」といった罵声と文字通り石やガラス片を投げつけられたと語る。一方でそういう風潮だったからこそ、女以上に女っぽい彼の芸風は一部のアングラ劇団やアーティストには受け入れられ、活躍のチャンスを広げていく。もちろんそれは彼が“本物の芸”を持っていたから受け入れられたのだが、変革していく時流にうまく乗ったのも間違いない。中でも、自分のコンサートのチケットを買ってくれた肉体労働者にささげた「ヨイトマケの唄」を作るに至った経緯は、他人を思いやる気持ちが一番大切という彼の生き方そのものが凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして、ホモセクシュアルをいち早くカミングアウトした過去にも触れるが、どれほどの逆風が吹こうとも彼は己に正直であろうとする。もはや性別や性的嗜好の問題ではない、三輪明宏という一人の人間として見てほしい。そう願う彼の言葉は、差別や偏見を持つ、すべての人の心に突き刺さる。

オススメ度 ★★*

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