こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

SEOBOK ソボク

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永遠の命を与えられたけれど、自由は与えられなかった。思考も感情もあるのに、実験材料として扱われた。そして、初めて出会った科学者ではない人間とは心が通った気がした。物語は、iPS細胞採取のために生み出されたクローンと、その警護を命じられた元工作員の友情を描く。クローンの身柄を狙う者がいる。倫理に反すると抹殺を図る者もいる。誰が敵で誰が味方なのか。裏切りと欺瞞のなか、2人は逃亡を続け真実に迫っていく。みなが願う不老不死、一方で限りある人生だからこそ人は進歩する。人間たちが葛藤していても、クローンにはクローンの意思がある。そんなクローンに、トラウマを抱える元工作員はいつしか理解を示していく。家畜と同等に扱われるクローンと絶望した元工作員、彼らがお互いのために戦う姿は、生きる意味を問いかける。

余命わずかなギホンはソボクの細胞で治療できると知らされ、移動中のソボクを警護する。2人はトラックで移送中に傭兵部隊に襲撃され拉致されるが、ソボクの念動力で脱出に成功する。

情報部の隠れ家に避難したギホンとソボク。研究所では栄養剤しか与えられてこなかったソボクはカップ麺を貪り食う。初めて食べる人間の食べ物、たとえそれがインスタント食品でも、おいしいと感じるソボク。ギホンはソボクの内面に触れた気がして、任務の内容が少しずつ変わっていく。上司の嘘に気づいたギホンは自分のためではなくソボクのために組織に歯向かう決意を固めるのだ。己のために命を張ってくれるギホンにソボクも念動力で応える。守るべきもののために人は強くなれると彼らの関係は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ソボクを抹殺したい情報部と身柄を抑えたい財閥の傭兵部隊。圧倒的な火力を前にギホンとソボクは破滅的な戦いを挑む。もはやマンパワーでは勝ち目はない。抑制剤が切れ血を噴出させながらも、自らが存在した痕跡をギホンの記憶に残そうとするソボクの姿は鬼気として美しい。やっと眠りにつくことができたソボクの表情は安らかだった。

監督  イ・ヨンジュ
出演  コン・ユ/パク・ボゴム/チョ・ウジン/チャン・ヨンナム/パク・ビョンウン
ナンバー  130
オススメ度  ★★★


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