こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

すずめの戸締まり

異界との扉に埋め込まれた要石を抜いてしまった。扉を閉じて鍵をかけなければ大地震に襲われる。物語は、現世を守る重要な役割を担わされた少女の旅を描く。災厄の兆しが見えるのは自分と椅子だけ。誰かに話しても信じてもらえないのはわかっている。でも、原因を作ってしまった以上、命がけで止めなければならない。人が去り放置された場所、でも忘れられずに残っている場所。そんなところに置かれた扉を探し、災厄の兆しを封じるうちに心の片隅に残っている記憶がよみがえっていく。扉の向こうは澄み切った夜空に無数の星が瞬く美しい世界なのに、こちらに向かって醜いものを吐き出してくる。人生が変わる瞬間、それは運命となってヒロインを突き動かす。自己犠牲なんかじゃない、時に無謀な勇気は大地のエネルギーにも匹敵するとこの作品は訴える。


宮崎の廃墟温泉にある扉から飛び出した巨大ミミズ状の邪気を封じた鈴芽と草太。次の禍を防ぐために鈴芽と3脚椅子に変えられた草太は、しゃべる猫・ダイジンを追う。


 SNSを追跡することでダイジンの居場所はわかる。神戸の廃遊園地に現れたダイジンを見つけた鈴芽は観覧車の扉からあふれ出すミミズの阻止に成功する。普通の高校生だった鈴芽がたくましく大胆になっていく過程が躍動感あふれる映像で再現され、己の使命に目覚めた鈴芽が陸橋からジャンプするシーンは目くるめく感覚を味合わせてくれる。スマホさえあれば手ぶらで家出してもなんとかなる、情報伝達スピードを速め長距離の移動を可能にするテクノロジーの進化が、大規模災害を予防できるのではと予感させてくれる。


◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆


その後、保護者の環、草太の友人・芹沢と合流した鈴芽は、クルマで東北の被災地に向かう。途中立ち寄ったサービスエリアでふと環が漏らした本心と、それを重く感じる鈴芽の息苦しさがぶつかり合う。叔母と姪、愛情や信頼で結ばれていてもどこかバランスを欠いる。家族には、夫や父の役割を果たすべき存在が、家計の稼ぎ手という以外にもやっぱり必要なのだ。


監督  新海誠
出演  原菜乃華/松村北斗/深津絵里/染谷将太/伊藤沙莉/花瀬琴音/花澤香菜/神木隆之介/松本白鸚
ナンバー  210
オススメ度  ★★★
↓公式サイト↓
https://suzume-tojimari-movie.jp/