こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マイ・エレメント 

父の願いをかなえるのが私の夢。そう信じて父の仕事を手伝ってきた。すぐに癇癪を起す癖さえ直せば、もう父の代わりは務まる。そして立派な後継者になってみせる。物語は、小さな雑貨屋の娘がリベラルな青年と出会い、本当にやりたかった目標に目覚めていく過程を描く。両親は新天地を求めてこの町にやってきて、懸命に働いてお店を繁盛させた。そんな彼らを誇りに思い同じ道を進むのが当然のだと思っていた。ところが違うコミュニティから来た青年は、世界は思っているよりずっと広く人生の可能性と選択肢はもっとたくさんあると彼女に教える。まったく違う習慣と思想、まさに火と水くらい相いれないふたりが相手を理解していく過程は、よく知ることが共生の条件であると訴える。

火族のエンバーは店の水道管を壊し、水族の検査人・ウェイドから営業停止処分を受ける。事情を話して取り消しを求めるうちに、エンバーはウェイドたち水族が自分の未来は自分で決めていると知る。

火族の人々は場末のエリアに集まって暮らしている。水族は近代的建築物が立ち並ぶ都市の中心部で豊かな暮らしを享受している。他には土族と風族がこの国には暮らしているが、基本的に他族とは必要以上に交流しない。火族は豊かさを求めて先進国に来た移民、水族は欧米先進国の支配階級の象徴であるのは明白。家族のつながりこそが生活の基本と考える火族の一員であるエンバーは、その染みついた考えからなかなか抜け出せない。ウェイドはそんなエンバーを見守りつつも、彼女が苦境を脱するための手伝いを献身的に行う。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてふたりは心を通わせ、どうしたら肉体的にも触れ合えるのかを試行錯誤する。だが、本当に彼らが男女として交わってしまっていいのだろうか。結局、火族は水族に飲み込まれるだけではないのか。そこには米国的な自由と民主主義は唯一不可侵で、米国人は他者を啓蒙しなければならないというおごりが透けて見えた。多様性とは異なる価値観がお互いに尊重し合いながら併存することなのだと思うのだが。

監督     ピーター・ソーン
出演     リア・ルイス/マムドゥ・アチー/ロニー・デル・カルメン/シーラ・オンミ/ウェンディ・マクレンドン=コービー/キャサリン・オハラ
ナンバー     144
オススメ度     ★★*


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