こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シャル・ウィ・ダンス?

otello2005-04-27

シャル・ウィ・ダンス? SHALL WE DANCE


ポイント ★★*
DATE 05/4/23
THEATER 109シネマズ港北
監督 ピーター・チェルソム
ナンバー 51
出演 リチャード・ギア/ジェニファー・ロペス/スーザン・サランドン/ボビー・カナバル/スタンリー・トゥッチ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


大きく突き出たお尻、肩から背中にかけての盛り上がった筋肉、そして太い首。ヒロインを演じるジェニファー・ロペスが見せるダンスはパワフルでスピーディだが、優雅さや洗練は一切感じない。社交ダンスとはもっとも遠いと思われる女優に草狩民代の役を演じさせたことが最大の失敗。ストーリーラインはディテールまで踏襲しているのに、なぜヒロインだけはオリジナルから離れたキャラクターにしてしまったのだろう。もう少し社交ダンスの奥行きを表現できる女優を選ぶべきだった。


弁護士として成功をしているジョンは仕事も家庭も満ち足りているが、何か人生に物足りなさも感じていた。そんなとき、通勤電車の窓から見上げると悲しそうな目をした女性がビルの窓辺から遠くを見つめている。ジョンはたまらず彼女のいるダンス教室に飛び込んでしまう。


仕事は順調、家庭も円満、それでいて単調な毎日に飽きている。そんな中年男のちょっとした冒険物語として、繊細な心までリチャード・ギアはうまく表現している。ワンパターンだけれど居心地のいい日常からほんの少しだけ踏み出す勇気。最初は美しい女性目当てだったのに、やがてはダンスの魅力にとりつかれていく。そして最後には妻との愛を再確認する。「気味の幸せをいちばん誇りに思う」などというセリフ、日本の男性は決して自分の妻には告げないだろう。妻を愛する気持ちをストレートに表現できるところがハリウッド版の進化したところだろう。


周防版オリジナルは間違いなく傑作だが、それにしても舞台と俳優だけをシカゴに移しただけというのはあまりにも芸がなさ過ぎる。そこまでオリジナルのテイストを重要視するのなら、やはりヒロインはジェニロペではなく、優雅さと芯の強さを兼ね備えた別の女優にすべきだった。人生で最大の挫折を味わってどん底の中でもがきながら生きる目標を探しつつ、主人公にダンスを教えながら自分もまたダンスは楽しんでステップを踏むものということを教えられる。そんな複雑なヒロインの心理は彼女からはうかがえなかった。


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