こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シン・シティ

otello2005-10-05

シン・シティ SIN CITY

ポイント ★★★*
DATE 05/10/1
THEATER ワーナーマイカルつきみ野
監督 フランク・ミラー/ロバート・ロドリゲス
ナンバー 121
出演 ブルース・ウィリス/ミッキー・ローク/クライブ・オーウェン/ジェシカ・アルバ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人工的に強調された光と陰がモノクロの世界を鮮やかに切り取り、血なまぐさい場面もクールに加工する。実写とアニメの境界をあいまいにすることによって、暗黒に支配された街に生きる人間に命を吹き込む。アメリカンコミックとハードボイルドタッチが見事に融合し、斬新な表現に満ち溢れた映像は最後まで飽きさせない。ただ、限られた時間内に多くの情報を詰め込もうとしたため、主人公のモノローグが多くなりすぎる。これならばエピソードを3つに分けなくても、ひとつのエピソードだけで十分に1本の映画として成立したのではないだろうか。


アメリカを陰で操る実力者が支配するシン・シティ。悪がはびこり力なき者はくいものにされる。ハーディガン刑事は連続少女誘拐犯を追い詰めるが、仲間の裏切りにあって罪を着せられた上服役させられる。仮釈放中のマーブは一夜を共にした娼婦が殺されたことから彼女の復讐を誓い、街をさまよう。ドワイトは自分の恋人に暴力をふるう男を痛めつけるが、娼婦たちの自治地区で刑事だったその男が殺されたため、娼婦たちと共に戦うハメになる。


3つのエピソードに共通しているのは主人公たちの行動原理が女への愛に支えられていることだ。特に自分を頼ってきた娼婦を殺されて復讐を誓うマーブという男のキャラクターは素晴らしい。醜い顔と頑強な体で、車にはねられても銃弾を浴びてもビクともせず、ひたすら復讐の鬼となる。また彼と戦う人肉を食う暗殺者も存在感抜群で、ふたりの対決は異形の肉体と異常な精神の代理戦争となる。まったく新しいキャラを演じるミッキー・ロークイライジャ・ウッドが強烈な印象を残す。


3つのエピソードそれぞれに多数の人物が登場するが、それぞれ無関係のようでロアークという黒幕を追うという構成のため、意外ときちんと交通整理されている。ただ、その並行するエピソードが最後にはひとつに収斂するという仕掛けがほしかった。

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