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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

不都合な真実 

otello2007-01-18

不都合な真実 AN INCONVENIENT TRUTH


ポイント ★★★★
DATE 06/7/29
THEATER UIP
監督 デイビス・グッゲンハイム
ナンバー 121
出演 アル・ゴア///
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


増え続ける二酸化炭素排出量が確実に地球表面の平均気温を押し上げ、極地や高地の氷河を融かしている。そしてそれに気づきながらも経済政策を優先させるために問題を先送りにするアメリカ人。テロや貧困といった国家・民族間の紛争・軋轢を解決するために行動することも大切だが、それ以上にわれわれ人類の故郷である地球を守るという大所高所に立てば環境問題こそ解決すべき最優先事項。2000年の米大統領選に敗れた男が自分の本来の生きる道に目覚め、米国と米国民のためだけではなく地球と人類のために立ち上がる。


クリントン政権で副大統領を務め、政治家として長年環境問題に取り組んできたアル・ゴアは、今日もスライドを使った講演会を開き地球の窮状を訴える。地球温暖化が異常気象をもたらし、生態系の破壊と大災害を繰り返す。このままではやがて極地の氷が融け、低地が水没し、奇病が発生、人類は未曾有の危機に直面しているという。


ゴアはマスメディアを利用するのではなく、講演会で聴衆に直接語りかける。そのために米国内はもとより欧州・アジアなど精力的に飛び回り、肉声で訴える。政治家だけにその押し出しは強く舌弁は滑らか、比喩やジョーク、視覚効果の使い方も洗練されている。内容以上にゴアのキャラクターが聴衆の心を捕らえて離さない。そして、二酸化炭素排出量削減を取り決めた京都議定書に調印しないのはほかならぬ米国自身であること、また米国の二酸化炭素排出量が突出していることを具体的な数字をあげて糾弾する。それがただ単に政敵であるブッシュ批判で終わるのではなく、米国人すべて、ひいてはすべての人類に訴えているところにゴアの人間性を強く感じる。


まだ手遅れではない。ひとりひとりが自分にできることを実行するだけで、温暖化は確実に回避できる。ゴアは聴衆の自覚を促すことで講演を締めくくる。国内経済やテロとの戦いという米国の問題という点では米国民の支持はブッシュに及ばなかったが、グローバルな視点で人類の将来を考える指導者としてゴアは圧倒的な支持を集めるだろう。

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