こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Xゲーム

otello2010-08-26

Xゲーム

ポイント ★★*
監督 福田陽平
出演 荒木宏文/菊地あやか/仲川遥香/三上真史/相島一之/鶴見辰吾
ナンバー 191
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


いじめた方は忘れていても、いじめられた方はいつまでも覚えている。その記憶は時とともに発酵し熟成し、やがて邪悪な復讐の炎に火をつける。やられた仕打ちを何倍にもして返し、死ぬまで決して許さない。映画は人間の業の深さと怨念の強さを描きつつ、いじめられる立場の人間がどれほどの恐怖と苦痛を感じているかを体感させてくれる。罰ゲームが行われる教室のあくまでも明るい雰囲気はいじめる側のもの、いじめられる側には楽しそうな音楽も地獄の交響曲に聞こえるという演出がシャープだ。


小学校時代の同窓会に出席した英明は、当時の担任が同窓会の直後に自殺したと知らされる。真相を究明しようとするうちに黒い服の女の存在に気付き、彼女を追うと電撃で気を失う。目が覚めると鉄格子がはめられた教室に、クラスメートだった智絵・新庄・吉池の3人とともに監禁されていた。


4人はそこで小学校時代に自分たちがはやらせた「Xゲーム」に強制的に参加させられる。それは想像を絶する肉体的痛みを伴うもので、もし責め手が手加減すると焼き鏝を押される過酷なもの。4人は逃れたい一心で他の人間を責め、ターゲットになった者も必死でゲームをクリアしようとする。最初はわが身だけは助かろうとエゴ丸出しにしていた彼らも、後半は力を合わせてクリアしようとする。そのあたりの人間心理が赤裸々で、非常に緊迫感を持った映像に仕上がっている。


◆以下 結末に触れています◆


その後この「Xゲーム」は小学校時代に彼らがいじめた蕪木という女子が仕組んだことと知り、泣いて懺悔し許しを請うが、願いは一切聞き入れられない。その絶望感こそいじめられっ子が日々心に抱いている感情だと彼らは身をもって体験させられるのだ。そうした展開のなかで、「いじめはいけない」というメッセージが、残酷さを楽しむエンタテインメントとして見事に昇華されている。ただ、終盤のどんでん返しと謎ときは、処理がもたついて蛇足に思える。もう少しスマートな終わり方があったはずだ。