こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Xゲーム2

otello2012-03-03

Xゲーム2

オススメ度 ★★★
監督 山田雅史
出演 多田愛佳/平嶋夏海/ユキリョウイチ/朝加真由美/瀬戸カトリーヌ/名高達男
ナンバー 52
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

いじめた方はとっくに忘れているが、人格を踏みにじられ、笑い物にされ、犯罪者の汚名まで着せられた被害者の心の傷は決して消えることはない。恨みは時とともに、同じ苦しみでなぶり殺しにする陰湿な殺意に熟成される。映画は前作同様、逃げ場のない教室に閉じ込められた男女が次々と課題を与えられ、クリアできないと壮絶な肉体的責め苦が待っているパターンを踏襲する。その都度彼らは徐々に人間的な弱さを露呈し、自らの醜さを自覚させられていく過程に胸を抉られる。

真っ暗な教室で目覚めた女子高生の美鈴は、他に4人の男女と共に世間で噂になっているXゲームに監禁されたと知る。一方雑誌記者の尾籐はXゲーム組織を調査するうちに、以前記事にしたスクープが美鈴の将来を奪っていた事実に気づく。

AKB女優の演技や設定の稚拙さ等、映画としての完成度は高くない。だが、そこで描かれる不条理への怒りや痛みへの恐怖、己だけは助かろうとエゴをむき出しにしていく感情は非常にリアルで、共感と反感、さらには被監禁者たちを応援しつつも彼らが犯した罪に対しては「当然の報い」の思いもよぎる。なにより、「いじめはいけない」などと口で言うより、いじめられた当事者の気持ちを具体的な罰の形にして見せ、苦痛を視覚化しているところが効果的だ。

◆以下 結末に触れています◆

やがて、この5人の接点が明らかになるにつれ、いじめは子供同士の間だけで起こっているのではない事が明らかになる。学級崩壊とモンスターペアレンツ、その上性犯罪とマスコミ沙汰になった事件という、ステレオタイプを越えた要素を盛り込んで意外性を強調するアイデアは秀逸。大人になっても環境次第でいじめは続き、いつ自分が犠牲者になるか分からない恐ろしさと、かつて他人をいじめた経験はないかと子供時代にまで過去を振り返らせてくれるほど不思議なパワーを持った作品だった。

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