こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パラノーマン ブライス・ホローの謎

otello2013-02-06

パラノーマン ブライス・ホローの謎 PARANORMAN

監督 クリス・バトラー/サム・フェル
出演 コディ・スミット=マクフィー/タッカー・アルブリッチ/アナ・ケンドリック
ナンバー 25
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

CGよりも精緻、生身の俳優以上に繊細。滑らかな動きと豊かな表情を持つ人形たちは、命だけでなく心まで吹き込まれているよう。舞台となる米国の源流にあたる古い街並みや人を寄せつけない森の雰囲気はどこかゴシックホラー風の趣を漂わせ、暗く切ない映画の世界観を象徴している。物語は霊能力ゆえに家族や友人に阻害されてきた少年が、魔女から町を守ろうとする姿を描く。死にきれないまま300年間さまよい続けるゾンビと彼らを退治しようとする人々、本当に恐ろしいのは人間の胸の奥に巣食う偏見や先入観であるとこの作品は訴える。

死人が見えるノーマンは家でも学校でも変人扱いされていたが、ある日プレンダーガストおじさんから魔女の封印を守る役目を受け継ぐ。ノーマンは友人らと共に魔女の墓を探すが、そこから出てきたのは7体のゾンビ。彼らはノーマンに救いを求めてくる。

ノーマンたちは魔女の墓を突きとめるために町の歴史を紐解く。その過程で、裁判で無念のうちに処刑された魔女が、濡れ衣を着せた裁判官たちに不死の呪いをかけていた事実が明らかになる。そんな、死んだのに安らかな眠りは訪れず、醜い体となって憎悪の対象となるゾンビたちの背中が哀しい。それはまさに“魔女”にされた彼女が味わった苦痛、時が下ってもノーマンやデブのニールなど、“フツーと違う”者がいじめの対象になる社会の体質や人々の本性はまったく変わっていないという人間の本質を突いていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、死者と対話する能力で魔女に語りかけることに成功したノーマンは、彼女がまだ自分と同じ年頃のいたいけな少女だったと知る。おそらく彼女は脅され責められて自白させられ、傷つき脅え悔しさと恨みを残して死んでいったはず。その気持ちを理解できるのは、自身もまた理不尽な仕打ちにさらされて生きてきたノーマンのみ。それでも今は21世紀、己を信じ勇気を持てば道は開けると希望を持たせてくれる。。。

オススメ度 ★★★

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