こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シュレック フォーエバー

otello2010-10-23

シュレック フォーエバー SHREK FOREVER AFTER

ポイント ★★★
監督 マイク・ミッチェル
出演
ナンバー 251
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


愛する妻と可愛い子供たちに囲まれた、平凡だけれども幸せな日々。仲間を救うために戦ったヒーローとして人々から尊敬も集めている。しかし、それは望んでいた人生とはどこか違う。勝手気ままに過ごしたいと願っている男は、若き日の自由と刺激に満ちた時間を取り戻そうとする。毎日の繰り返しにウンザリしながらもその生活に埋没し、たまった鬱憤をいつか晴らそうとする気持ちが非常にリアルで共感できる。何かを選ぶには何かを捨てなければならない、映画は、「なりたかった自分」を手に入れた代償と、わが身を犠牲にしてでも守るべき人がいる幸福を描く。


フィオナと結婚し、3人の赤ちゃんを授かり、ちょっとした有名人気分を味わっているシュレックは、徐々に違和感を募らせていく。ある日、シュレックに恨みを持つ魔法使い・ランブルと取引し、心のままに生きていたころに戻る。ところがそこはランブルが支配する暗黒のパラレルワールドだった。


契約書ではシュレックに残された猶予は1日、その間に「運命の人とキス」しなければ消滅してしまう。シュレックは反乱軍のリーダーを務めるフィオナと出会うが、彼女にシュレックの記憶はない。シュレックはフィオナのキスを得るために反乱軍の一員になりランブルや魔女軍団と闘う。やはり怪物と恐れられイタズラして回るより、フィオナのため、そして己のため命がけで暴れまわるほうが性に合っている。危機の時こそ活き活きとするシュレックの表情がまぶしかった。


◆以下 結末に触れています◆


物語はお約束通りハッピーエンド、シュレックは元の世界で家族や友人に恵まれた充足感をかみしめる。だが、この作品が素晴らしいのは、はたしてそれでシュレックは満足なのかと疑問を呈していること。しばらくすれば以前と同じ思いが再び胸に湧いてきて、また誘惑に負けるかもしれない。結局、男はいくつになっても冒険心を忘れない、そしてそれは女には永遠に理解されない、そんな夫婦間の普遍的なテーマを浮き彫りにしているところが子供向けアニメとは思えない奥行きを持っていた。