こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

裏切りの戦場 葬られた誓い

otello2012-10-04

裏切りの戦場 葬られた誓い L'ordre et la morale

監督 マチュー・カソヴィッツ
出演 マチュー・カソビッツ/マリック・ジディ/シルビー・テステュー
ナンバー 241
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

自分を信用してくれた敵との約束と、それを反故にせよという上層部の命令。板挟みになった男は信義よりも国家への忠誠を選ばざるを得ない。物語は反乱軍との人質解放交渉役を担った将校が、平和的に解決しようと敵の懐に飛び込む一方で、味方の強硬派政治家・将軍らに努力を踏みにじられていく姿を描く。反逆者といえども必ず言い分があり、彼らの信頼に足る人間でありたいと願うが、それでは規律を乱してしまう。映画はそんなジレンマに陥った主人公の葛藤を、軍人らしく感情の抑制が効いた映像で再現する。

1988年4月、仏領ニューカレドニアで独立派武装ゲリラが憲兵隊宿舎を急襲、人質を取ってジャングルに立てこもる。フランス領内の“内乱”と位置付けられ、憲兵隊大尉のフィリップは部下とともに派遣されるが、指揮権は陸軍が握っていた。

現地民を「ニグロ」と呼ぶ差別意識丸出しの陸軍との主導権争い、中道左派と保守派が争う大統領選挙の行方を横目に様子をうかがうタカ派大臣、それら“味方の中の敵”との意見の相違を調整しつつ、あくまで人命を尊重するフィリップは反乱軍のリーダー・アルフォンソと接触、彼らの要求を聞き出そうとする。自ら人質となるが伝令として返されとフィリップは大臣から叱責を受け、立場を反転させざるを得ない。反乱軍の訴えの正当性を語らせ気持ちを通わせたはずのアルフォンソを、つまり原住民たちを裏切らなければならない苦悩。憔悴し、怒りを抑え、そのうえで己のせいで命を落としたゲリラの死体が転がる前線に戻るフィリップの心の痛みが胸をえぐる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

大統領選を間近に控え事件を一刻も早く片付けたい大臣は、反乱軍の鎮圧を命じる。装備に勝る仏軍は圧勝、さらに反乱軍兵士を勝手に処刑しても、仏本国ではフランスの正義が為されたことになっている。戦争だけではないが、結局、勝ったほうが正義。だがフィリップは良心から断罪する、これは決して正しい行いではなかったと。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓