こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・タウン

otello2011-02-09

ザ・タウン THE TOWN

ポイント ★★
監督 ベン・アフレック
出演 ベン・アフレック/ジョン・ハム/レベッカ・ホール/ブレイク・ライヴリー/ジェレミー・レナー/ピート・ポスルスウェイト/クリス・クーパー
ナンバー 33
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


治安の悪い地域に生まれ育ち、成功を夢見てそこから出ようと試みたが挫折し、父の代からの強盗になるしかなかった主人公。それでも、盗みはしても殺人はしないわずかな良心は残っている。そんな男がひとりの女と出会ったとき、悪行から足を洗う決意をする。映画は、一度足を踏み入れたら命令には絶対服従のギャングの掟と愛の板挟みになった彼の葛藤にFBI捜査官との駆け引きを交え、運命のアリ地獄から這い出ようともがく姿を描く。犯罪を仕切る裏社会のボスの表の顔が花屋という皮肉が効いている。


ダグ率いる4人組は街の銀行に押し入り、マネージャーのクレアを人質に取って逃走する。身元の発覚を恐れた仲間のジェムは彼女を脅そうとするが、代わりにダグがクレアに接近、同じ地区出身だったことからふたりはデートを重ねるようになる。


金庫を開けさせ、輸送車を襲撃し、球場から現金を強奪する。自動小銃で武装し洗練されたダグらの動きはまさにプロ。逃走用の車も数台用意してあり、彼らの錬度の高さがうかがえる。それほどの大掛かりな組織が普通の市民にまじって暮らしている。そして貧困から抜け出すには不法行為に手を染めるしかない現状が、格差社会に対する強烈な批判となっている。だが、ダグがクレアに近付いて彼女と恋に落ちてしまう設定は不自然ではないか。監視するだけならともかく、正体を悟られる危険を冒してまで近づくのは理性的なダグの行動とは思えない。また、小さな店舗とはいえ若くして支店長を務めているクレアは高学歴のエリート層で、ブルーカラーのダグとはそもそも階級が違う。ひねりを加えたつもりだろうが、この「犯罪者と被害者の恋」はリアリティに乏しかった。


◆以下 結末に触れています◆


さらに最後のヤマを踏んだ後、ダグ1人のうのうと逃げおおせるのだ。いくらクレアに対する気持ちが純粋でも、明らかにダグは凶悪犯。汚れたカネならともかく、奪ったのは庶民の預金。その上悪党とはいえ2人も殺している。やはりダグに非業の死を遂げさせてこそ、この物語からカタルシスを得られたはずだ。。。