こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

インモータルズ -神々の戦い-

otello2011-10-26

インモータルズ -神々の戦い- IMMORTALS

ポイント ★★*
監督 ターセム・シン
出演 ヘンリー・カヴィル/スティーヴン・ドーフ/ルーク・エヴァンス/イザベル・ルーカス/ケラン・ラッツ/ジョセフ・モーガン/フリーダ・ピント/ジョン・ハート/ミッキー・ローク
ナンバー 251
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


天空に浮かぶ大理石の神殿から人間界の営みを観察する神々、強大な武力と残忍さで世界を支配しようとする邪悪な王、鍛錬された武芸と不屈の精神で祖国を守ろうとする若者。男たちは力強くしなやか、女たちは豊満で優美、登場人物はみなギリシア彫刻のような肉体を誇示し、リアリティよりもイマジネーションを優先させた感覚的なヴィジュアルは巨大津波や肉弾相撃つ戦闘シーンですら格調高いシンフォニーのよう。神々と人間がいまだ共存していたはるか昔、帝国を築こうとする王と防衛するギリシア人の戦いと、世界の覇権をめぐる正邪の神々の争いの中で、選ばれし青年の苛烈な運命を描く。


周辺国を制圧しギリシアに侵入したハイペリオン王の軍隊がテセウスの村を襲う。目の前でハイペリオンに母を殺されたテセウスは復讐を誓うが逆に捕えられ奴隷にされる。強制労働に疲れ果てていたテセウスは伝説の弓のありかを知る巫女・パイドラに助けられ、数人の仲間と脱走する。


神々がまとう黄金、巫女の真紅のドレス、ギリシア軍のいぶし銀の鎧、ハイペリオンのカニばさみのような兜。古代ギリシアという時代設定のもと、自由な発想でデザインされた衣装の数々が登場人物の性格を表現していて印象的。さらに主人公の感情を象徴するような色彩とコントラストのきいた映像は、新しい表現の可能性をも予感させる。そしてハイペリオンの大軍やギリシアの城壁など画面の隅々まで神経の行き届いたディテールと、一瞬で数人敵を倒すテセウスの洗練された格闘術が目を楽しませてくれた。


◆以下 結末に触れています◆


神が人間の姿をして人々の生活に紛れ込んだり、英雄が神として天界にむかえいれられたり、人間と神々の距離は非常に近い。そして、ギリシアの民が窮地に陥った時には、禁じられているにもかかわらず神々は何らかの形で干渉し、結局は救いの手を差し伸べてくれる。そのあたりご都合主義的に見えなくもないが、もしかしてこの映画は、国家破綻の危機にある現在のギリシアにもきっと救国の英雄が現れオリンポスの神々が守ってくれると言いたかったのだろうか。。。