こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シャッフル

otello2011-10-25

シャッフル


ポイント ★★*
監督 及川拓郎
出演 金子ノブアキ/賀来賢人/鎌苅健太/ムロツヨシ/市川亀治郎/中村ゆり
ナンバー 253
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


記憶喪失、怪しげなバイト、何か秘密がありげな田舎の町…。誰がウソをついていて、誰が騙されているのか、閉鎖空間で繰り広げられるテンポの速い会話と俳優たちの大仰な演技は小劇団のステージの熱気をそのままスクリーンに再現する。伏線が一切なく突然状況が反転するドンデン返しの連続は一瞬の気の緩みも許さず、強引とも思える語り口は見る者をグイグイと物語に引き込んでいく。まるで停滞を恐れるかのような息もつかせぬ展開は、欠点も含めて演劇を見ている気分だった。


日給200万円の高給に引かれ廃工場での胡散臭い実験のモニターになった戸部は、3人の被験者と共に試験官から順次課題を与えられていく。さまざまな刺激が加えられていく過程で失われていた戸部の記憶が少しずつ戻り始めるが、実は彼らは1週間前に起きた銀行強盗の犯人、モニター実験は戸部だけが知っているカネの隠し場所を思いださせるための芝居だった。


4人はあの手この手で戸部の記憶を蘇らせようとするが、廃工場には彼ら以外にもミスター山下なる人物が裏で糸を引いている。また、全員かおりという共通の女を知っているが、なぜか彼女はそれぞれに違う顔を見せている。そして謎が新たな謎を呼び、当初の計画は狂い始め、全く先が読めなくなる。正道を行くミステリーならば、登場人物が意味ありげな表情を浮かべたり小道具を使って観客にさりげなく予感を抱かせるのだが、そういったタメは一切なく、大転換が唐突に訪れるあたりかえって潔さすら感じる。


◆以下 結末に触れています◆


その後もさらに二転三転し、実際に青写真を描き彼らの行動を操っていたまったく意識していなかった人物が浮上してくる。だが、そこまで来るともはやアイデアを通り越してびっくり箱。最終的に解き明かされた謎を時系列に沿って並べていくと、ストーリーの構成は矛盾だらけで明らかに破綻している。しかし、それこそがこの芝居の作者が目指した小劇場風のナンセンス喜劇の真骨頂というところか。。。