こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル

otello2011-12-03

ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル
Mission: Impossible-Ghost Protocol


ポイント ★★★★
監督 ブラッド・バード
出演 トム・クルーズ/ジェレミー・レナー/ポーラ・パットン/サイモン・ペッグ/ジョシュ・ホロウェイ/マイケル・ニクビスト/アニル・カプール
ナンバー 285
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


開放廊下をしなやかにジャンプし、建物の窓から電線を伝って車上に飛び降り、超高層ビルの外壁を這い登り、立体駐車場の昇降機で格闘する。今回の活劇のこだわりは上下方向の動き、体重を感じさせない身軽さと重力を利用した大胆さに加え、またもやアッと驚くアイデアで手に汗握るスリルを味あわせてくれる。同じ主人公を同じ俳優が演じているのに毎回監督を変えて違う趣向で見せるこの「シリーズ4作目」も、トム・クルーズのサービス精神が全編に充満していて決して飽きさせない。圧倒的なスピードと生身の肉体を駆使したアクションの数々は興奮に満ち、時折挟み込まれるユーモアもウイットに富んでいる。


クレムリン宮殿地下書庫にある極秘ファイルを盗み出すミッションを受けたイーサンは、罠にはめられて爆弾テロ犯の濡れ衣を着せられる。米国政府からは見捨てられ、ロシア当局に指名手配される中、全面核戦争を目論むヘンドリクスという男を追ってドバイを目指す。


シリコン製の覆面で他人になり済ます変装技術を使わず、お互いの顔を知らない敵同士の盲点を衝いて取引に割り込む作戦が緊張に溢れている。いつばれるかわからない、そもそも望みのモノを手に入れれば相手を殺すつもりのヘンドリクスや女殺し屋を向こうに回した虚々実々のコンゲーム。2組に分かれたイーサンのチームは同時進行で騙し打ちを仕掛けるのだが、一瞬の気の緩みが命取りになる息詰まるシーンは、大掛かりなカーチェイスや銃撃戦よりよほど洗練されていてた。


◆以下 結末に触れています◆


狂った天才が「絶滅による進化」を唱えるあたりは非常に現代的。イーサンが戦うべき悪は、国家や国際テログループといった組織ではなく、今や実行力と信念を持ち自己犠牲も厭わない個人なのが新鮮だ。一方でイーサンたちも、ヘンドリクスやロシア当局から見れば得体のしれないテロリストに過ぎない。もはや善悪の境界は意味を失い正義がなされても誰にも賞賛されない、ヒロイズムから遠く離れた21世紀のスパイ映画は今後どこに向かうのだろうか。。。


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