こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け

otello2013-03-28

キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け ARBITRAGE

監督 ニコラス・ジャレッキー
出演 リチャード・ギア/スーザン・サランドン/ティム・ロス/ブリット・マーリング/レティシア・カスタ/ネイト・パーカー
ナンバー 73
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

家族のため、投資家のため、そう言ってあらゆる行いを正当化する男は、人ひとりの命より己の地位が持つ社会的責任のほうが重いと思っている。いや、自らを“カネを生み出す神”と称し、結果を出せば多少の不正は許容されると勘違いしている。そんな彼が、“MONEY”の5文字にとり憑かれ、支配しようとし、振り回され、破滅に追い込まれていく過程で見せる悪あがきの数々はむしろ滑稽ですらある。映画は多額の損失を抱える投資会社社長が、死亡事故を起こし、それらを隠ぺいしようとして八方ふさがりになっていく姿を描く。ビジネスは有能、妻子や孫も愛している、だが、人間としての倫理観が決定的に欠けている主人公を、高級スーツに身を包んだリチャード・ギアがリアルに演じる。

銀行との合併話が進展せず苛立つロバートは、交通事故で愛人を死なせてしまう。スキャンダルを恐れたロバートは現場から逃走、事故とは無関係を装うが刑事に執拗に付きまとわれる。一方で後継者でもある娘が会社の不正経理を嗅ぎ付ける。

粉飾決算が公表されれば詐欺罪に問われ、愛人の件でも過失致死罪は必至。さらに妻にも愛人との事故を知られロバートは進退窮まる。それでも絶対に非を認めず、嘘とごまかしで切り抜けようとする。彼のシラを切りとおす図々しさと開き直りはもはや芸術的才能をうかがわせ、根拠のないことでも自信満々のハッタリで相手を丸め込む舌先三寸はカネに魂を売った人間の潔さを感じさせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後もロバートは苦悩の色を濃くするが、あくまでどうすれば窮地から脱出できるかにフォーカスし、決して良心と向き合おうとはしない。ロバートの中では「真実は人を自由にする」という言葉は、「よくできた嘘とカネが人を自由にする」と置き換えられているのだ。そしてロバートのような人間を生み、その存在を肯定しているのは、行き過ぎた資本主義にどっぷりと浸かった一般大衆ではないのかとこの作品は問いかける。果たしてお前はロバートを断罪できるのかと。。。

オススメ度 ★★★

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